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インダストリー5.0のデータ共有ネットワーク、GAIA-XやCatena-Xがもたらす革新インダストリー5.0と製造業プラットフォーム戦略(3)(4/8 ページ)

インダストリー4.0に象徴されるデジタル技術を基盤としたデータによる変革は、製造業に大きな変化をもたらしつつある。本連載では、これらを土台とした「インダストリー5.0」の世界でもたらされる製造業の構造変化と取りうる戦略について解説する。第3回はインダストリー5.0においてキーコンセプトとなってきているGAIA-Xや、Catena-Xなどのデータ共有ネットワークの動向について紹介する。

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自律分散でのデータ共有を図る「GAIA-X」

 一方、同じく欧州発で取り組みが進んでいるのが「GAIA-X」だ。GAIA-Xは、中央サーバを介さない分散型のデータ共有(Federation Service)のためのクラウドデータ基盤/アーキテクチャの策定を目的として300以上の企業が参加する組織だ。2021年にドイツとフランスの両政府を中心に設立され、現在では欧州を中心とした世界25か国へと広がっている。ベルギーの国際法にもとづく「非営利組織」である。

 IDSA同様に組織自体がデータスペースを構築することや、プラットフォームとして動くわけではなく、Federation Serviceでのデータ共有を支えるオープンソースのソフトウェアコンポーネントの開発や各種参照モデル/ルールの策定を行っている。現在既に90以上の事例が生まれている。

 GAIA-Xが目指すFederation Serviceとは「中央サーバを介さない分散型のデータ共有」を意味する。IDSAとGAIA-Xは密接に連携して取り組みを進めているが、このクラウドにおけるFederation Serviceの実現を目的としていることがGAIA-Xの大きな特徴である。大規模な連携が必要で、複数主体でのデータ交換においてはGAIA-XのFederation serviceが重要となる。Federationとは、対等な立場で協力し合う参加者の集まりのことを示しており、誰の所有物でもなく、参加者が共同ルールに基づき協力し合う。中央サーバを介さずに自律分散型で信頼性や安全性を担保した形でデータ共有を実現するのだ。中央集権型のWeb2.0に対するアンチテーゼとして、Web3.0のコンセプトが積極的に議論されているが、産業のデータ連携においてもこのWeb3.0に近い概念が検討されている。

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図9:GAIA-XにおけるFederation Serviceの概念[クリックで拡大] 出所:GAIA-X

欧州各地に広がるGAIA-Xハブ

 GAIA-Xは欧州各地に連携拠点となるHubを用意し、各Hubがそれぞれの市場や国、産業に応じたデータスペース整備を進めている。これにより推進のスピードを上げているのだ。それぞれのハブは、国レベルで企業、ステークホルダー、さまざまなイニシアチブや協会、公的機関をまとめ、具体的なユースケース展開を支援している。本部と、主体的に動く各国Hubにより多くのユースケースが生まれる体制となっている。

 こうした取り組みについて、ガバナンス体制や、意思決定に関する懸念の声も存在しているのも確かだ。しかし、新たな取り組みを行う場合は各所でコンフリクトを生みながらも進めていくことが何よりも重要だ。これらの一部の衝突を切り取り「やはり現状維持が一番」と批判に終始し、グローバルの動きを知ろうとせずに失敗をしてきたのが過去の日本ではないだろうか。GAIA-Xは各国Hubでユースケースを実装しながら、そこで出た課題や問題を受け止めながら全体での仕組みをアップデートしていく「走りながら考える」スタンスで進めている。こうした進め方は、失敗(批判)がないように体制やプロセスの根回しに時間をかけすぎて機を逸することが多い日本において大きな示唆となるだろう。

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図10:GAIA-Xの組織体制[クリックで拡大] 出所:GAIA-X

主なGAIA-Xの事例

 先述した通り、GAIA-Xでは各国Hubの主導のもと多くのユースケースが開発されてきている。データ主権の担保に主眼を置くIDSAと、クラウドでの非中央集権/分散データ共有のFederation Serviceの実現に重きを置くGAIA-Xではベン図のように重なる部分と、それぞれ個別に展開しているものも存在する。後述するCatena-Xや、先述のIDSAの事例で取り上げたSCSN、モビリティデータスペースなどは双方が重なる事例だ。下記では、その他のGAIA-Xにおける主要なプロジェクトの一例を紹介したい。

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図11:GAIA-Xでの主な事例[クリックで拡大] 出所:GAIA-X資料から筆者が作成

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