インダストリー5.0のデータ共有ネットワーク、GAIA-XやCatena-Xがもたらす革新:インダストリー5.0と製造業プラットフォーム戦略(3)(3/8 ページ)
インダストリー4.0に象徴されるデジタル技術を基盤としたデータによる変革は、製造業に大きな変化をもたらしつつある。本連載では、これらを土台とした「インダストリー5.0」の世界でもたらされる製造業の構造変化と取りうる戦略について解説する。第3回はインダストリー5.0においてキーコンセプトとなってきているGAIA-Xや、Catena-Xなどのデータ共有ネットワークの動向について紹介する。
「IDSA(International Data Space)」が目指すデータ主権確保
IDSA(International Data Space)は、「データ主権」を担保したデータ共有の標準やルールの策定を目的とし、22カ国以上に及ぶ自動車、通信、化学、金融、鉄道、ITなどの幅広い業界から130以上の企業や組織が参画している組織だ。既にIDSAが策定した枠組みを生かした60以上の事例が生まれている。もともとは2014年にフラウンフォーファー研究機構を中心とした産学官連携のプロジェクトとして始まり、2016年にIndustrial Data Space」として組織が設立された。その後、現在の「International Data Space」に改称されている。
IDSAが重視するデータ主権(Data Sovereignty)とは、データに関する権利を明確化しデータの提供者の意図が反映された形で、共通ルールで安全かつ公正にデータが管理できるようにすることを目指したものだ。その運営は情報セキュリティに加え、データが提供者の意図した相手にのみ届けられ、意図した目的でのみ使われることを保証できるようにする。またデータ利用者も提供者の都合で突然データが削除されたり改ざんされたりせず利用できることなど、データに関係する各者の権利を明確化し、それを保証する。ISDAだけでなく欧州発で展開されているデータ共有基盤はこの「データ主権の担保」がキーワードとなっている。
データ主権の技術的な鍵を握る「IDSコネクター」
IDSAをはじめ、後述するGAIA-Xや、Catena-Xにおいてもコネクターと呼ばれるデータ共有のためのオープンソースのゲートウェイが重要な技術要素となる。IDSAにおいてこのゲートウェイの役割として位置付けられているのが「IDSコネクター」だ。
IDSコネクターでは、あらかじめ定義された認証方法やデータ分類などに基づいてデータアクセスを制御(許可/ブロック)するゲートウェイ的な機能を持つ。このIDSコネクターを、例えば、データを送受信するクラウド、エッジコンピュータ、デバイスなどに実装する。このIDSコネクターを実装したもの同士でデータをやりとりすることで安全や信頼を保証し、セキュリティやデータ主権を保ったデータ流通を可能とする。またさまざまな既存クラウドサービスとの相互運用性も確保できるようになる。
IDSAで生まれている主なデータスペース
IDSAでは現在既に50以上のデータ共有のユースケースが生まれており、その領域は製造から、サプライチェーン、モビリティ、エネルギー、金融、農業、医療、スマートシティー、防衛など多岐にわたる。下表がその一部であるがIDSAのデータスペースのユースケースの一例だ。
また、IDSAではデータ共有ネットワークをマッピングする「Data Space Radar(データスペースレーダー)」を公開している。これは、データスペースをドメイン、成熟度、進捗度でマッピングしている。このようにIDSAの標準にもとづくデータ連携の取り組みが世界中で加速度的に展開されているのだ。
図8:データスペースレーダーのイメージ[クリックで拡大] 出所:ISDAのデータスペースレーダー:https://internationaldataspaces.org/adopt/data-space-radar/
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