エンジニアに必要不可欠な存在となったAI、2023年に注目すべき4つのトレンド:AI基礎解説(1/2 ページ)
製造業をはじめさまざまな産業分野で活躍するエンジニアにとって当たり前の存在となったAI。本稿では2023年のAIに関する注目すべき4つのトレンドを取り上げる。
AI(人工知能)は、“私たちの好奇心を満たし、近い将来実現されるもの“から、重要な企業ツールへと発展しています。そのため、エンジニアにとってもAIの重要性は増しています。
調査会社のGartnerはAIについて以下のように予測しています。
AIエンジニアリング手法を採用してアダプティブAIシステムの構築・管理を行う企業は、AIモデルの実運用の数と時間において未採用の同業他社を少なくとも25%上回る
組織がAIの採用を引き続き推進する機運も高まっています。2023年は、組織全体に価値をもたらす新しいユースケースを継続的に見つけることが求められる、AIにとって重要な年になると位置付けられています。
本稿では、2023年に採用または検討されることが予想される、以下の4つの主要なAIトレンドを紹介します。
1.マシンに現実世界を教える:物理法則に基づくAI
データ中心型のAIアプローチに加え、モデル中心型のAIアプローチも人気を集めています。データ中心型のAIモデルの多くは、受け取ったデータに基づいて最高の精度で最適化しようとするため、現実世界のルールや原理を無視してモデルが任意の結論を出します。複雑な工学システムなど、より多くの研究領域へAIが拡大し続ける中、モデルが現実世界に即したものであるためには、物理的な制約を考慮する必要があります。例えば、あるMIT(マサチューセッツ工科大学)の主任研究員は、物理法則に基づくAIを使用して新しい生物医学装置を設計し、軽度の外傷性脳損傷の検出を改善しています。
同様に、物理法則に基づくリダクションモデルを使用した低次元化モデリング(Reduced Order Modeling:ROM)は、近年人気を集めている新しいトレンドです。システムレベルの設計に使用するには計算量が多すぎる高忠実度モデルへの参入障壁を低くするこの手法は、AIを使用して、システムの第一原理モデルを置き換えることで、期待される忠実度を維持したまま、シミュレーションを高速化することができます。ROMやその他の物理法則に基づくアプリケーションの場合、AIはモデルが解に近づく能力を向上させ、ルールベースのアルゴリズムに基づく解釈可能性を向上させることができます。
物理法則に基づくAIは、シミュレーションにとって重要です。これらの複雑なモデルは、シミュレーション内のバリアントとして構成することができ、エンジニアはモデル間を迅速に切り替えて、最適かつ最も正確な解に近づくことができます。
2.コラボレーションへの要求:AIのオープンアクセスの拡大
イノベーションの名の下に、研究者、エンジニア、データサイエンティストがコラボレーションする機会が増えています。エンジニアのワークフローと役割に関するトレンドを鑑みると、今後はさらに多くのコラボレーションが必要とされるでしょう。
コラボレーション推進の1つ目のトレンドは、AIの研究がますます盛んになり、最新のモデルをオンデマンドで利用することが急務となっていることです。最新の研究モデルの共有の場として選ばれているのが、ソフトウェア開発のコラボレーションプラットフォームであるGitHubです。新しいモデルがGitHubで紹介されると、数時間後にはそのモデルをベースにした全く新しいソリューションが構築されていることも珍しくありません。高品質のモデルが大量にあることで、あらゆる人が、これまでよりも短時間で最新の研究に基づいてモデルを構築することができるのです。
2つ目のトレンドは、オープンソースソリューションへの依存度が高まっていることです。モデルが複数の異なるフレームワークで作成されているケースも多く、エンジニアは自分たちが使うシステムと最終的なソリューションとの間のギャップを埋めるソリューションを求めています。フレームワーク間の相互運用性が実現すれば、AIをより多様な研究分野に取り入れることが可能になります。
最後に、企業は特定分野に特化したAIの急速な発展のメリットを享受しようと、大学や国の研究機関と協力することが増えています。例えば、AIに関する産学連携により、「物理法則に基づく機械学習」や「生物医学的な画像処理」などに関する学術研究を活用しながら、企業は新たな課題に取り組むことができます。
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