3Dコラボレーションやデジタルツインを加速する「Omniverse」とは:セミナーレポート(2/3 ページ)
デル・テクノロジーズ主催セミナー「Workstation Masterclass - デジタルツインはこう攻めろ、最新ソリューションを知る」の講演内容から一部を抜粋し、「NVIDIA Omniverse」の概要や活用事例などを紹介する。
Omniverseがデジタルツインの実現で広く活用されている理由
また、Omniverseがデジタルツインの実現で広く活用されている理由として、カスタマイズ可能な拡張性の高さが挙げられる。Omniverseには、Omniverseアプリケーションを構築するためのツールキット「Omniverse Kit」が用意されており、「例えば、企業独自のシステムをOmniverseに接続するためのコネクターを開発するといったことが可能になる。つまり、一般的に普及する3Dソフトウェアだけでなく、独自開発のシステムを含めた“今ある環境”を全てOmniverseに接続して仮想空間に持っていくこともできる」(田中氏)という。
ちなみに、Omniverseへの接続方法としては、3Dソフトウェア側の編集内容とOmniverse上での編集内容を双方向で反映できる「双方向コネクター」、3Dソフトウェア側の編集内容をOmniverse側に反映できる「一方向コネクター」が用意されている他、USDデータを介したOmniverseとの接続、点群データやCADデータの取り込みもサポートする。
現在、Omniverseの活用シーンとして特に引き合いが強い領域としては、建築設計/レイアウト検討作業、自動車の製造ラインなど工場内におけるデジタルツインの構築、作業者のシミュレーション、AMR(自律搬送ロボット)やロボットアームのトレーニングなどが挙げられるという。
Omniverseを用いたデジタルツインの構築アプローチ(現在のOmniverseで構築可能な範囲)に関しては、まず3Dデータセット、マテリアル、ライティングの統合およびリアルタイムでのビジュアライゼーションを実現するステップ、次に出来上がった3D環境を活用するためのツールの開発、そして、実際に仮想空間上でAMRやロボットアームなどを動かすための物理シミュレーションの追加が挙げられる。さらに、「将来的には、IoT(モノのインターネット)を活用したセンサーデータの取り込みなどにも対応していく予定だ」(田中氏)としている。
講演では、業界を超えた3Dデザインコラボレーションと産業用デジタルツインの実現として、Omniverseの導入企業による活用事例を紹介。例えば、BMWグループでは工場を新設する際のレイアウト検討やロボットアームなどのトレーニング、アバターを用いた作業者のシミュレーションなどを実践し、工場全体でのOmniverse活用も積極的に推進しているという。同じく、自動車業界のメルセデス・ベンツでも電気自動車(EV)の生産ラインの検討用にOmniverseの活用を進め、工場のデジタルツインの実現を図ろうとしている。その他、AMRやロボットアームのトレーニングにOmniverseを活用するAmazon Robotics、店舗レイアウトや導線の検討などのためにOmniverseを導入した米国の大型ホームセンターLOWE'S(ロウズ)の取り組みなどについても紹介した。
また、RTXテクノロジーの最新情報として、新アーキテクチャである「Ada Lovelace」を採用した新世代GPUについても紹介。田中氏は「ベンチマークの結果、Ada LovelaceはOmniverseで非常に性能が出せることが分かった。前世代と比較して3〜4倍ものパフォーマンスを発揮する。中でもAIを用いて画像処理を高速化するDLSS3の搭載は、Omniverseとの相性が非常に良い」と述べる。
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