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カスタマーサクセス2.0を実践する製造業に学ぶ、顧客視点でのサービスづくり製造業のための「カスタマーサクセス」入門(3)(3/4 ページ)

顧客の成功体験づくり、「カスタマーサクセス」の重要性に国内外の製造業から注目が集まっています。本連載ではこの概念を分かりやすく解説します。第3回は前回紹介した「カスタマーサクセス2.0」を実践する企業の事例を取り上げて、エッセンスを抽出していきたい。

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「For Customer」から「With Customer」へ

 ここからは、企業と顧客という2者間の成功体験作りではなく、顧客とともに、もしくは他企業とともに、カスタマーサクセスを実践している企業の例を取り上げます。

 先に上げた米国のW.W. Graingerはハリケーンによる災害時に、被災者が発信するSNSを利用し、救援物資が必要な実店舗や場所を特定し、配送センターにその情報をすかさず連携、数千人の住民のために必要な災害救援をいち早く提供しました。まさに、デジタルを活用し、顧客の声と共に社会問題までも解決した事例です。この貢献により、W.W. Grainger自身、赤十字社から「災害救援活動における重要パートナー」として承認され、企業イメージを高めることにつながりました(図6)。


図6:W.W. Graingerの事例[クリックして拡大] 出所:セールスフォース・ジャパン

 社会課題解決への貢献と自社の企業成長を共に実現している事例は、他にもあります。ドイツの金属加工メーカー、Condiasです。同社は、当時従業員30人という小規模ながら、さまざまな大学、研究機関、企業といった他パートナーと共に、南アフリカ農村地域における汚水処理の研究開発プロジェクト(Safe Water Africa)に参加しました。同社の特殊な金属加工技術を用い汚水を浄水化し、地域住民の安全で豊かな暮らしの体験に一役買ったのです。また、Condiasにとっては、単独では今まで参入できなかったアフリカ市場へ、他パートナーの力を借りて進出する機会を得たことになりました(図7)。


図7:Condiasの事例[クリックして拡大] 出所:セールスフォース・ジャパン

 このように他企業と連携して、顧客の成功体験、ひいては社会問題の解決に取り組む事例は数々あります。例えば、ドイツの大手化学メーカーのBASFと米国の世界最大農機メーカーのDeere&Companyが提携し、作物生産の改善や自動化、環境に対する影響を低減できる農業支援サービスプラットフォーム「ZARVIO」を提供しています。

 そして、日本の全国農業協同組合連合会(全農)の営農管理システム「Z-GIS」は、このZARVIOと連携して気象情報や人工衛星からの作物や品種の画像解析情報を利用し、生育予測や防除を最適化する情報を生産者に渡しています。これは生産者の収益アップに直結するだけでなく、日本農業全体が抱える農業従事者の減少や食料自給率低下といった社会課題の解決にも貢献しています(図8)。


図8:農業におけるグローバルリーダー2社[クリックして拡大] 出所:セールスフォース・ジャパン

 以上考察してきたように、製造業が果たすべき役割は進化してきています。従前の、ただモノを顧客に提供して買ってもらうという姿勢から、顧客のために成功体験を追求する姿勢にシフトしているのです。そしてさらには、自社だけでなく、時には目の前にいる顧客や他企業パートナーと共に、自社の強みを生かし、足りない部分は他から補足し、社会課題といったより大きな目標を達成するという潮流が確実に始まっていることを見逃してはいけないでしょう。これは「With Customer」の取り組みと定義できると思います(図9)。


図9:製造業の潮流[クリックして拡大] 出所:セールスフォース・ジャパン

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