検索
連載

米国のヘルスデータ研究を支えるAPI/相互運用性の標準化海外医療技術トレンド(91)(2/3 ページ)

本連載第61回で、COVID-19対応を契機とするクラウドネイティブなAPI連携の導入について取り上げたが、米国の研究開発領域ではAPIやデータの相互運用性標準化に向けた動きが本格化している。

Share
Tweet
LINE
Hatena

発展途上にある医療APIエコノミーのエコシステム

 ONCは、消費者の視点に立った報告書の公表後、以下の通り、研究者、アプリケーション開発者/データインテグレーター、医療機関のマルチステークホルダー視点に立った報告書を公表している。

  • 「科学的発見に向けて加速するAPI:研究者の視点」(2021年3月)(関連情報、PDF
  • 「科学的発見に向けて加速するAPI:アプリケーション開発者とデータイングレーターの視点」(2022年3月)(関連情報、PDF
  • 「科学的発見に向けて加速するAPI:医療提供者の視点」(2022年6月)(関連情報、PDF

 ONCによると、各報告書とも、以下のような点に着目することによって、標準化されたAPIとヘルスケアアプリケーションに対する理解と利用を加速させるとしている。

  • どのようにして個人が、APIで可能になるアプリケーションを利用して、セキュアに自分の電子健康記録(EHR)データにアクセスできるか
  • どのようにしてAPIが、研究者のために保健医療データへのアクセスを改善するか
  • どのようにしてデータアグリゲーターやデータインテグレーター、アプリケーション開発者が、APIを通して市場におけるイノベーションや競争をけん引できるか
  • どのようにして医療機関が、APIを利用してさらにケアを支援できるか

 上記の報告書のうち「科学的発見に向けて加速するAPI:アプリケーション開発者とデータイングレーターの視点」について見ると、以下のような構成となっている。

  • イントロダクション
    • より大きな相互運用性へのシフト
    • 手法
  • 調査結果
    • 採用と利用の現状
    • 標準化されたAPI利用の動機づけ要因
    • 拡張されたデータセットとユースケース
    • モバイルプラットフォーム統合
    • 開発者ツールとリソース
    • 展開と統合の課題
    • 展開と検証サンドボックス
    • 独自APIとカスタム統合
    • データマッピングとデータの完全性
    • APIプロセス向上の機会
    • 集中型ツールとリソース
    • 業界教育と連携
    • 医療組織向けガイダンス
    • プライバシーとセキュリティの考慮事項
    • 粒度の細かいコンセントとワークフロー
    • データガバナンス
    • データセキュリティリスクと責務
  • 結論
  • 参考文献

 ここでは、開発者の視点から、以下の通り、APIやアプリケーションの採用と利用の現状に関するトピックを挙げている。

  • 標準化されたワークフローやプロセスが、デジタルヘルスとモバイルアプリケーションソリューションのさらなるイノベーションを促進する
  • 複数のEHRや保健医療システムに渡って、相互運用性のあるデータを利用することが、標準化されたAPIやアプリケーションの利用に向けて、強力な動機付けの要因となる
  • 規制および認証上の要求事項(「国家医療IT調整室(ONC)21世紀治療法最終規則」および「CMS相互運用性および患者アクセス最終規則」)が、医療IT開発者、医療機関、医療保険者による相互運用性のあるソリューションの導入や電子健康情報(EHI)へのアクセス拡大の提供の動機付けとなる
  • 「プラグアンドプレイ」の潜在力すなわち複数システムへのシームレスな接続が、低コスト、少ないリソース、短い開発ライフサイクルで、「セルフサービス」モデルのけん引を支援する

 また、開発者ツールとリソースに関連して、さまざまな医療IT開発者との協働経験を基に、以下のような課題点を挙げている。

  • 医療IT開発者は、公共の場のWebサイトで利用可能なアプリケーション開発リソースや文書(FHIRリソース、アクセスポイント、エンドポイントなど)を作るのに一貫性がない
  • 医療IT開発者は、一般的に、必要なAPIへのアクセスを認めるが、アプリケーション機能を完全に検証するために十分なサンプルデータを提供しない可能性がある
  • アプリケーション開発者/データインテグレーターには、一般的に、政府のポリシー(ONC21世紀治療法最終規則など)や技術規格(FHIR R4,、FHIR Bulk Data Accessなど)を理解した、ポリシーや標準規格のスペシャリストがいない−特に小規模のアプリケーション開発者は、ポリシーおよび/またはONC医療IT認証プログラムについて周知されていない可能性がある
  • 費用全体の低減を目的とするポリシーがあるにもかかわらず、標準化されたAPIや医療アプリケーションを開発・導入する場合、費用の障壁やリソースの欠如が、アプリケーション開発者やデータインテグレーター、保健医療システムにとって継続的な課題となる

 報告書は、医療IT開発者からのサポートの欠如と開発リソース(例:文書化、API、サンドボックスなど)の利用可能性が最低限にとどまっていることが、開発/検証プロセスの大きなボトルネックになっていると指摘している。また、APIが競合製品との接続に利用される可能性があることを、医療IT開発者が意識しているために、FHIR APIへのアクセスが難しい点も報告されているという。

 このような障壁の存在は、アプリケーション開発者/データインテグレーターの間に、ジレンマを作り出している。図1は、現状を打破するために、一部の医療IT開発者が提供しているアプリケーション開発リソースへのアクセスやサンドボックスの検証のための階層例を示したものである。

アプリケーション開発リソースへのアクセスの階層
図1 アプリケーション開発リソースへのアクセスの階層[クリックで拡大] 出所:Office of the National Coordinator for Health Information Technology (ONC) 「Accelerating Application Programming Interfaces for Scientific Discovery: App Developer and Data Integrator Perspectives」(2022年3月)

 基本的には無料アクセスを前提とするが、インテグレーター(例:検証/利用に対する課金)、認証済(例:パートナーシップに対する課金)、アプリケーションリスト掲載(例:ギャラリーリスト掲載に対する課金)といった階層別に設定された費用負担モデルを提示している。ただし、サードパーティーの資金提供者(例:ベンチャーファンド、補助金、顧客など)を確保していない限り、必要な資金を持っていないことが多い。従って、サードパーティーのアプリケーション開発者は、アプリケーションを開発し、保健医療システムのEHRに接続する前に、法的文書の作成やコンセント管理を先行しておく必要があるとしている。法的文書の例としては、データソース同意書、データ利用同意書、接続性同意書、パーソナライズ利用のための同意書、ITサポート同意書などを挙げている。

 日本国内では、次世代医療基盤法に基づく匿名加工情報や仮名加工情報の取り扱いについて見直し作業が進んでいるが、米国と比較すると、アプリケーション開発者/データインテグレーターを後押しするようなビジネスモデルの開発が遅れている。「国家医療IT調整室(ONC)21世紀治療法最終規則」や「CMS相互運用性および患者アクセス最終規則」のようなデータ利活用に対するインセンティブ付与施策を有する米国との規制環境の差も大きい。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る