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4ステップで進めるDX、未来を「想像」するのではなく「創造」せよDXによる製造業の進化(8)(2/3 ページ)

国内企業に強く求められているDX(デジタルトランスフォーメーション)によって、製造業がどのような進化を遂げられるのかを解説する本連載。最終回となる第8回は、4つのステップから成るDXを実現するためのアプローチについて紹介する。

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Step2:戦略の策定

 目指す姿と現状の間には、さまざまなギャップがあります。戦略の策定を進めるに当たり、まずはそのギャップを見える化することが重要です。

 目指す姿を実現するためには、どういった能力や経験を有した人材が必要でしょうか。ユーザーニーズを満たすためには、どのような製品ラインアップを確保すべきでしょうか。先進技術の開発や事業活動の展開には、どの程度の資金を要するでしょうか。目指す姿を実現するために必要な経営資源を多角的な視点から棚卸しすることが望まれます。

目指す姿と現状のギャップ
目指す姿と現状のギャップ[クリックで拡大]

 目指す姿と現状の間にあるギャップを解消できれば、目指す姿に到達できます。そのギャップ解消の施策を取りまとめたものが戦略です。人的資源が不足しているのであれば、目指す姿を実現するために必要な能力や経験を有した人材を採用、育成することが考えられます。あるいは、M&Aによって、拠点網や顧客基盤、そして時間を買ってしまうことも一案です。

 「DX時代ならではのビジネス」を目指すのであれば、そういった既存の施策に加えて、「DX時代ならではの施策」も検討すべきです。例えば、クラウドソーシングを活用することによって必要な人材を適宜確保することができるかもしれません。他社とコンソーシアムを組めば、経営資源を獲得するための投資を抑制できるはずです。

 経営資源に不足があるからといって、その獲得方法だけを考えるのではなく、デジタル技術による代替や経営資源を必要としないビジネスモデルへの転換を検討できないでしょうか。目指す姿の実現に向けて、単なるギャップの埋め合わせではない「DX時代ならではの戦略」を探求することが肝要です。

Step3:実行計画の策定

 戦略の策定後、次に考えるべきは「何を実行するのか」です。各施策のタスクや手順を具体化し、実行計画に落とし込むことで、担当者が代わっても取り組みを継続できるようにします。施策の実行による効果やKPI(重要業績評価指標)を明記し、進捗度や達成度を明確に評価できるようにすることも重要です。

 DXを早期に成し遂げるためには、全ての施策を即座に実行することが望ましいわけですが、人材や資金などの制約もあります。難易度と効果を基準に各施策の優先順位を定めて「いつ実行するのか」を考えることが現実的です。

 DXはビジネスモデルの革新であるが故に、一朝一夕には実現できません。業務が変わることに対して現場の抵抗も予想されます。DXを進めることの意義や効果に懐疑的な見方をする人もいるでしょう。そのため、いち早く「成功しつつあること」を社内外に発信することが大事になります。早期に成果を得やすい施策を先んじて実行し、DXの推進に前向きな雰囲気を醸成すべきです。

 一方、ユーザーへの提供価値の拡大や収益の増加などに大きな効果を見込める重要施策は、往々にして時間や手間がかかります。成功確率を高めるためにも、計画的かつ段階的に進めることが大切です。

 どれほどすばらしい施策であっても、実行されなければ意味がありません。「誰が実行するのか」を明確に定めることで各施策の推進力を高めるべきです。実行計画には、組織名や役職名だけではなく、個人名を明記することで、責任の明確化を図ることも有効でしょう。

Step4:推進体制の構築

 DXによるビジネスモデルの革新を図ろうとするのなら、起業したばかりのスタートアップでない限り、既存事業との兼ね合いが問われます。一度に全てを改めることはできないからです。既存の事業活動を通じた収益を維持、拡大しつつ、DXによる非連続な成長を実現しなければなりません。つまり、「既存と新規」「守りと攻め」「持続的な成長と非連続な成長」を両立させつつ、ビジネスモデルの革新を図る「両利きの経営」の実践が求められるわけです。

 既存事業を維持/強化する人と、DXを推進する人では、求める人物像や評価の在り方が異なります。故に、DXを推進する組織は、事業部門とは別に設置し、異なる評価体系を適用することが望まれます。求める人物像に合った人材が社内にいなければ、外部から獲得することも一考です。

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