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日本は仕事の価値が給与に反映されにくい? GDPの「分配面」に注目する小川製作所のスキマ時間にながめる経済データ(6)(1/2 ページ)

ビジネスを進める上で、日本経済の立ち位置を知ることはとても大切です。本連載では「スキマ時間に読める経済データ」をテーマに、役立つ情報を皆さんと共有していきます。第6回では、あまり注目されないGDPの「分配面」に注目して、各国のデータと比較しながら日本の状況を紹介します。

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※編集注:「スキマ時間にながめる経済データ、統計が映す日本の現在」は「小川製作所のスキマ時間にながめる経済データ」に改称いたしました。「連載記事アラート」を設定されていた方は、お手数ですが再度ご登録をお願いいたします。

引き続き、本連載をご愛読いただければ幸いです。


付加価値の「分配」という知られざる側面

 今回は、私たち労働者の生み出す付加価値とお給料の関係をご紹介します。

 もっとも重要な経済指標の1つであるGDP(Gross Domestic Product、国内総生産)は国内で生産された付加価値の合計という意味ですね。付加価値は、労働者が仕事を通じて、顧客に代わり生産した金額的価値と言えます。

 GDPには生産面支出面分配面の3つの側面があって、その合計は一致するという三面等価の原則が成り立つといわれています。生産面とは、以前ご紹介した通り産業ごとのGDPとして表されるものです。ここでは「誰が、どれだけ付加価値を生み出したか」という見方をしています。

 支出面とは家計や政府の消費支出や投資(総資本形成)など、「誰が何に支出したか」という見方です。この2つの見方は一般的に良く知られていますが、では残る分配面とは一体どのような指標なのでしょうか?

 今回はあまり知られていない分配面にスポットを当て、付加価値と給与の関係について共有したいと思います。

⇒連載「小川製作所のスキマ時間にながめる経済データ」のバックナンバー

GDPの「分配面」に注目する


図1:日本のGDP分配面の名目値(OECD統計データを基に筆者にて作成)[クリックして拡大] 出所:小川製作所

 図1は日本のGDP分配面のグラフです。青の部分が労働者である家計への分配となる雇用者報酬、赤が企業への分配となる営業余剰・混合所得、緑が政府への分配となる純間接税をそれぞれ示しています。

 雇用者報酬は労働者に直接分配される賃金/俸給と、雇い主側の社会保険料分担分などの社会負担の合計となります。

 GDPを分配面から見ると、実は私たち労働者のお給料はその一部である事が分かります。日本の場合、1997年をピークにしてGDPは停滞が続き、その分配でもある雇用者報酬も停滞が続いています。

 雇用者報酬対GDP比は、GDPに対する雇用者報酬の割合です。付加価値の内、どれだけの割合が労働者に分配されたかという、労働分配率に相当する指標と言えますね。

 この雇用者報酬対GDP比は、日本ではほぼ50%で推移しています。付加価値に対する分配の割合はほぼ変化していない事になりますね。

 因果関係は何とも言えませんが、少なくとも労働者の稼ぐ付加価値とその分配であるお給料とは、極めて強い関係があるということは事実のようです。そして、日本はお給料の基ともいえる付加価値が長期間停滞していますので、雇用者報酬も停滞が続いているのも道理なわけです。

成長するドイツの分配は?

 国内統計だけ見ていては、日本の状況が一般的なのかどうか、判断が付かないことが多いですね。他国の状況と比較することで、相対化して理解する姿勢が重要と思います。

 ここではまず、日本と同様に工業国として知られ、人口も停滞気味と共通する部分の多いドイツの統計データを眺めてみましょう。


図2:ドイツのGDP分配面の名目値(OECD統計データを基に筆者にて作成)[クリックして拡大] 出所:小川製作所

 図2はドイツのGDP分配面の推移です。リーマンショックにより一時期マイナス成長となっているように見えますが、基本的に右肩上がりで成長を続けている様子が分かりますね。

 GDPの成長に合わせて、雇用者報酬も右肩上がりで増えています。当然、並行して物価も上昇していますが、それ以上の成長により実質値としてもプラス成長しています。

 今後の連載の中で、物価や実質値についてもご紹介する予定ですが、基本的に日本以外の国々は、名目値、物価、実質値はともにプラス成長の傾向にあります。雇用者報酬対GDP比も、50%をやや超える水準で推移しています。

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