なぜ日本で2nmの先端ロジック半導体を製造しなければならないのか:モノづくり最前線レポート(2/3 ページ)
半導体などマイクロエレクトロニクス製造サプライチェーンの国際展示会「SEMICON Japan 2022」が2022年12月14日に開幕し、オープニングキーノートパネルとして、新たな半導体製造会社であるRapidusなども含む「半導体・デジタル産業戦略」に深く関わる主要メンバーが登壇し「グローバルリーダーを目指す産官学戦略」をテーマに、日本における半導体産業の在り方や社会変革の方向性などについて語った。
もう一度日本に最先端ロジック半導体の技術を取り戻す
今回の登壇メンバーの内、甘利氏と東氏、五神氏の3人には2年前のSEMICON Japan 2020でもキーノートパネルとして鼎談しており、海外とのアライアンスや日本の半導体求心力の強化、日本をデジタルアイランドにする構想、イノベーションのエコシステム開発などの提言を行っていた。
その後、こうした議論や提言を具体的に推進するため産官学の有識者で話し合う「半導体・デバイス産業戦略検討会議」が生まれ、東氏がその座長となり、甘利氏や五神氏、小池氏も参加して議論を進め、「半導体・デジタル産業戦略」の取りまとめなどにつなげた。さらに、新たに生まれたRapidusでは、小池氏が社長、東氏が会長を務めている他、研究開発基盤であるLSTCは理事長に東氏、アカデミア代表に五神氏が就いている。また、Rapidusと新たに提携したIBM側の責任者がギル氏であり、協力して2nmプロセス半導体の量産の実現に取り組んでいる。
半導体産業の振興策に積極的に取り組む理由について、政府の半導体政策を推進する甘利氏は危機感を挙げる。「21世紀はデータ駆動型社会だ。そしてデータは半導体の支えによって活用することができるため、半導体駆動型社会だともいえる。ただ、日本は周辺の技術はあるが、最先端のハイエンドロジックの生産拠点がない。半導体産業の今後を見ると、最先端ハイエンドロジック半導体が求心力となり、周辺関連技術の産業が集まる仕組みになる。そうなると、根幹となる最先端ハイエンドロジック半導体がないということは、日本から周辺産業も出ていく可能性があり、強い危機感を持っていた」と甘利氏は述べている。
また、東京エレクトロンで会長や社長を務めた東氏は、日本の半導体産業の現状について「半導体のシェアは1990年代後半から下がり始めた。シェアと同時に最先端のロジック半導体技術も失われ、かつての日本の業界に対するリーダーシップも失われた。今は孤立している状況で、アジアが要求するような性能やコスト、スピードに追い付けていない状況だ」と厳しさを訴える。
こうした状況に対し「再度、最先端ロジック半導体に関する技術を取り戻すことで経済成長基盤を作るのが今回のプロジェクトだ。そのためにRapidusを立ち上げた。世界を10年、20年とリードできる会社としたい。その基盤として研究開発をサポートする組織としてLSTCも設立している。加えて、IBMやimec、米国や日本のサプライヤーや研究機関が協力する枠組みができ始めている」と東氏は現在の動きの意味について説明する。
一方、五神氏は、アカデミアとして今回のプロジェクトに積極的に参加する意義として用途開発を挙げている。「微細化に加え、チップレットや3次元化が進むとこれまでのよりもトランジスタ数の増加は加速する。チップ当たりの処理能力が人間の脳を超える状況になり、それをどう使うのかということが問われるようになる。そこで、最初にユースケースを開拓するのはハイエンドの研究開発領域だと考えている。つまり、アカデミアでの用途開発が最初になる。そのために、連携を進めていくことが重要だ。さらに素早く進めるためには全世界の同時参加が不可欠で、機運を作り出す」と五神氏は述べる。
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