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【DXで勝ち抜く具体例・その4】収益機会を拡張するビジネスDXによる製造業の進化(7)(2/3 ページ)

国内企業に強く求められているDX(デジタルトランスフォーメーション)によって、製造業がどのような進化を遂げられるのかを解説する本連載。第7回は、第2回で取り上げたDXで勝ち抜く4つの方向性のうち「収益機会を拡張するビジネス」の具体例として、Propeller Health、Kyoto Robotics、John Deere、LANDLOGの取り組みを紹介する。

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Kyoto Robotics――ロボットのデータを活用してサプライチェーンを効率化

 Kyoto Roboticsは、2000年に設立された立命館大学発のスタートアップです。物体を3次元で認識する3Dビジョンと、そのデータを活用してロボットを制御するモーションラーニングの技術をビジネスの基盤としています。

 従来のロボットは、大きさや重さが分からない荷物の積み下ろしができません。そのため、ロボットを使うには、事前に荷物のマスターデータを作成しておく必要がありました。Kyoto Roboticsは、3Dビジョンで荷物の大きさや形状を認識し、一定の範囲内の重さであれば持ち上げられるロボットを組み合わせることで、このペインポイントを解決することに成功したのです。

 Kyoto Roboticsのロボットが荷物を積み下ろすと、必然的に大きさや重量などが計測されます。これをマスターデータとして活用すれば、その後の保管、搬送、梱包、出荷などの作業にロボットを導入することも容易になります。 Kyoto Roboticsは、マスターレスを成し遂げただけではなく、マスターメーカーの機能をも兼ね備えたロボットを開発したわけです。

 実際、Kyoto Roboticsがマスターメーカーの役割を担っている物流センターでは、他社のロボットがそのデータを使って動いています。将来的には、出荷する荷物の大きさや重さをあらかじめ計算することで、トラックの運用台数を最小化できるかもしれません。納品先の物流センターや店舗でロボットを運用するときに役立てられる可能性もあります。そう考えると、サプライチェーンの川上から川下までの効率化を推進できるだけのポテンシャルを有しているといっても過言ではないでしょう。

Kyoto Roboticsの混載デパレタイズソリューション[クリックで再生] 出所:Kyoto Robotics

John Deere――農機から得られるデータで農業生産と流通効率を向上する

 世界最大の農業機械メーカーであるJohn Deereは、IoTやビッグデータなどを活用した農業生産のDXを推進しています。現在では、IoTデバイスを全ての農機に標準搭載しており、そこから得られるデータを製品の開発やアフターパーツの供給、買い替えやメンテナンスの提案などに役立てています。

 John Deereの農機を導入した農家は「MyJohnDeere」に登録することで、農機の管理や作業計画の作成などに寄与するデータの提供を得られるようになります。温湿度、風速、日射、雨量、作物や土壌の水分量などを計測する「Field Connect」を設置すれば、作付、灌水、施肥、農薬散布を行うべき時期や数量などを科学的に判定した結果も提示されます。農家からすれば、農機の使用による省人化のみならず、農業生産の最大化をも実現できるというわけです。John Deereにとっては、ビッグデータの活用により農機の性能のみに頼らない競争優位性を築いたといえます。

 John Deereのビジネスモデルにおける特徴は、このデータを匿名化した上で第三者に販売していることです。穀物商社からすれば、相場の展望を占うに当たり、作物の生育状況を知ることの価値は極めて大きいといえます。肥料/農薬メーカーにとっても、施肥や農薬散布の結果が作物の生育にどのような影響を及ぼしたのかが分かると、次なる製品開発に生かせます。農家にある在庫量を把握することで、供給量を最適化することも可能になります。John Deereは、世界一の農機メーカーであることを生かしたデータビジネスを展開することで、新たな収益機会を獲得することに成功したわけです。

John Deereのビジネスモデル
John Deereのビジネスモデル[クリックで拡大]

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