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e-POWERの加減速とハンズオフ対応の運動性能で、乗り物酔いしないミニバンに電動化(2/2 ページ)

日産自動車は2022年11月28日、ミニバン「セレナ」をフルモデルチェンジして発表した。ガソリンエンジンモデルを2022年冬から、シリーズハイブリッド「e-POWER」搭載モデルを2023年春に発売する。

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エンジンを目立たせない

 e-POWERではエンジンの回転数とアクセルペダルの操作が一致しないため、エンジン音が目立つとドライバーの違和感につながる。そのため、ノートやエクストレイルなど他の第2世代のe-POWER搭載車種と同様に、「エンジンをなるべくかけない」「エンジンがかかっても静かである」「ノイズを車内に入れない」といった点にこだわった。

 「エンジンをなるべくかけない」という点に関しては、エネルギーマネジメント技術で実現した。バッテリー残量が一定以下になるまで極力発電しないようにしたり、路面が荒れていてエンジンノイズよりもロードノイズが大きいときに発電したりするなどの制御を行う。

 また、カーナビゲーションシステムで目的地を設定すると、目的地付近(約500m)で発電せずに走行できるよう先読み充電する。さらに、下り坂では回生ブレーキを最大限活用できるよう坂を下る前に放電する。回生エネルギーで満充電になった場合、過充電にならないように放電するため、不要な放電がなるべく起きないようコントロールする。

 「エンジンがかかっても静かである」という点はエンジンがかかった瞬間の違和感を抑える上で重要だ。具体的にはエンジンを静かに回すためにバランサーシャフトやフレキシブルフライホイールを採用。バランサーシャフトは3気筒エンジンならではの振動を打ち消す。静粛性向上のため、高剛性クランクシャフトも採用した。

 また、発電用エンジンの排気量アップにより、同じ回転数であってもより大きなエネルギーを取り出しながら静粛性を高めることができる。発電用エンジンは速度に応じて1600rpm、2000rpm、2400rpmと回転数が上がるが、先代モデルよりも回転数を抑えて速度を出せる点も静粛性に貢献している。

 「ノイズを車内に入れない」については、e-POWER搭載モデルではガソリンエンジンモデルに対して遮音材を追加した他、吸音材の面積や厚みの拡大、高遮音ダッシュインシュレーターの採用などの対策を施した。最上級グレードのルキシオンは遮音ガラスも採用する。


新型セレナではシフトレバーをなくした[クリックで拡大] 出所:日産自動車

プロパイロット2.0搭載のため、ミニバンでありながら高い運動性能

 新型セレナは、最上級グレードのルキシオンのみではあるが、プロパイロット2.0を採用する。プロパイロット2.0の採用は「スカイライン」「アリア」に続いて3車種目だ。ハンズオフに対応したプロパイロット2.0は、急な割り込みや突風などの外乱があってもハンズオフ状態で車線内の走行を維持する必要があり、高い運動性能が求められる。

 スポーツセダンであるスカイラインやバッテリーで低重心のアリアに比べてミニバンのセレナは不利になるが、プロパイロット2.0搭載のために運動性能を高めたことで、「安定して思い通りに動かせる」とドライバーが感じられるクルマになったという。e-POWERならではの滑らかな加減速や、左右の揺れを穏やかにする足回りによる「乗員が酔いにくい」という利点を打ち出していく。乗員、特に子どもが酔いにくいことで、家族でのロングドライブを楽しめるとアピールする。

 酔いにくさの検証に当たって、汗をかいた量を基にした評価方法を採用した。酔いにくさに貢献した要因は、乗員の頭が急に動かないこと、クルマがどう動くかが2列目シートからでも見えやすいことだとしている。見晴らしがよく開放的な視界や、最適な位置に配置された後席専用モニターなど、視覚的にもクルマ酔いの低減を図った。

 加減速や左右の揺れといった車体の動きを滑らかにするとともに、車体の揺れを伝達しにくいシートを採用したことで、揺れが少なく乗員の頭が動きにくい走りを実現した。e-POWERは、アクセルペダルだけで車速をコントロールできる「e-Pedal Step」の操作性も向上させ、アクセルペダルを急に戻しても滑らかに減速するようにした。最大減速Gは0.15Gから0.2Gに変更し、運転しやすくしたとしている。エネルギーの回生量も増加する。

 ロール挙動は、高剛性なサスペンションによって穏やかにした。サスペンションの剛性は50%向上。新開発のハイカット特性ショックアブソーバー、ロール剛性20%増のスタビライザー、リッジマウントタイプのサスペンションメンバーなどを採用した。欧州車と同様のサスペンションの取り付け方にすることで、振動が入ってきにくいという。コーナリング時のロールスピードは13%改善し、車体が従来よりもゆっくり傾くようにした。

 さらに、剛性を40%向上した高剛性のラックアシスト式電動パワーステアリングの採用により操縦安定性を高めるとともに、ミニバンが苦手とする横風を受け流す車体構造によりふらつきを抑え、高速でも安定した走りを実現する。コーナーでの修正操舵量は23%減少、横風によるヨーモーメント量は20%改善した。

e-POWERでも8人乗りに

 先代モデルでは7人乗りだったセレナe-POWERを8人乗りにするために、ハイテン材の採用を拡大するなど地道な軽量化を積み重ねた。シートが1人分増える他、タイヤ負荷率の算出が1人当たり55kgから75kgに変更になったため、タイヤを大きくする上でも軽量化が必須だった。

 シートスライド機構を3列目にも標準装備としたことで、8人フル乗車でも余裕のある座り心地を実現したとしている。また、先代モデルのマルチセンターシートを進化させ、e-POWERでも8人乗りを設定した。


e-POWERと8人乗りを両立した[クリックで拡大] 出所:日産自動車

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