実用化に向けて開発が進む自律“帆走”技術の今:船も「CASE」(1/3 ページ)
エバーブルーテクノロジーズは今も自律帆走技術の開発に取り組んでいる。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的まん延による停滞はあったものの、実証航海とプロトタイプのブラッシュアップを積み重ねて、自律帆走だけでなく機動力を重視した機走(内燃機関もしくはモーターで動作する推進器による航行)をメインとした自律運航小型船舶も手掛けるなど開発領域を広げている。
エバーブルーテクノロジーズは、自律“帆走”技術の開発と製品化を目指すベンチャー企業だ。その企業理念と帆走に取り組む理由、そして、独自開発の自律帆走トリマランディンギー「Type-A」については2020年10月に掲載した記事で紹介した。
それから2年近くが経った。エバーブルーテクノロジーズは今も自律帆走技術の開発に取り組んでいる。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的まん延による停滞はあったものの、実証航海とプロトタイプのブラッシュアップを積み重ねて、自律帆走だけでなく機動力を重視した機走(内燃機関もしくはモーターで動作する推進器による航行)をメインとした自律運航小型船舶も手掛けるなど開発領域を広げている。
長らく実証航海でノウハウを積み重ねてきた同社だが、2022年6月になって自律操船化ユニットの「eb-NAVIGATOR 2.0」をコアシステムとした小型船舶を製品化した。
eb-NAVIGATOR 2.0は、これまでの実証航海で使用してきたラジコンヨットベースの「1m級プロトタイプ」やトリマラン船型を採用した独自製造(船体は3Dプリンタで出力している)の「Type-A」に搭載してきた自律帆走用の各モジュールを1つの防水ユニットに収容したものだ。帆走モード、機走モード、そして帆走と機走の両方に対応するハイブリッドモードといった3つのバリーションをそろえており、それぞれのモードに適した船体と帆装、もしくは、推進器をセットにした状態で販売する。
これまでのプロトタイプと同様、陸上のオペレーターとリンクする4G LTE通信モジュール(利用場面が限られるもののWi-Fiモジュールも組み込んでいる)も備える。位置情報取得デバイスとして用いるドローン用フライトコントローラーも搭載しており、そこからはGPS位置情報に加えてコンパスデータ、加速度データもサポートする。
eb-NAVIGATOR 2.0からは、舵角変更データ、帆向変更(正しくは帆の向きを変えるために必要な帆桁操作索の送出量)データ、推進モーター回転数データを出力している(実際に変更するのはこれらのデータを受け取った舵操作モジュール、帆桁操作モジュール、モーター回転モジュールになる)。なお、eb-NAVIGATOR 2.0では推進モーター操作モジュールを2系統まで対応している。これは、2軸推進で舵の操作を必要としない操船を可能にするためで、左右の推進器(=スクリュー)の回転数や回転方向を変えることで船体の向きを変更できるようにする。
ちなみに、2.0ということは1.0というものもあったわけで、こちらは、開発途上で存在していたが、これが製品化を前にして2.0にバージョンアップしたとエバーブルーテクノロジーズCEOの野間恒毅氏は説明している。1.0では船体や帆装、推進器といった船側ハードウェアの依存度が高く、汎用性に課題があったという。「それぞれの船体特性に合わせて手直しする必要があった」(野間氏)
この状況で、船体特性に関係なく共通化できていたコアシステムを抽出して1つのユニットにまとめ、かつ、推進形態に合わせて帆走のみ対応、機走のみ対応、帆走と機走に対応と3つのバリエーションを用意したのが「2.0」となる。
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