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AUTOSAR CP入門(その5)続・BSWが提供するサービスの利用+AUTOSARは銀の弾丸ではない!?AUTOSARを使いこなす(28)(4/4 ページ)

車載ソフトウェアを扱う上で既に必要不可欠なものとなっているAUTOSAR。このAUTOSARを「使いこなす」にはどうすればいいのだろうか。連載第28回は、「AUTOSAR CP入門」のその5として、前回に続き「BSWが提供するサービスの利用」について取り上げる。

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4.従来と同じことしかできないの?(いいえ、違います!)

 「AUTOSARは、従来と同じことしかできないの?」と問われたら、「いいえ、違います!」と常々申し上げておりますが、「だったら、うちの会社が何をできるようになるのか、示してよ」といわれることは、2007年ごろから度々ありました。そこでは「逆に、何か解決したい問題はないのですか?」とお聞きすると、「だから、提案してよ!」といら立ち気味に返されるのがほとんどでした。苦心して考えたシナリオを説明しても、「ソリューションとして提案して」「どのくらいのコストでどの程度のリターンが得られるかを企画書にしてもってきて」といわれる(丸投げされる)ことも少なくありませんでした。

 あるいは、そもそも期待なんかしていない、なんてケースもあります。「ISO 26262-6 Annex DでのFFI Memoryの要求を満たすだけのために、RTOS(AUTOSSAR OS、特にScalability Class 3/4)を利用している(正確には、SC3/4が提供するメモリ保護機能だけを利用する)、取りあえずはそれで十分であり、OSやRTEを使った再利用性などの改善には興味がない」というお話は、最近でも各所で耳にします。

 COVID-19以前、最後に欧州渡航したとき、筆者が所属するAUTOSAR WG、安全関連Working GroupであるWG-SAF(Safety)や通信関連WGであるWG-IVC(In-Vehicle Communication)でこの手の議論を行った際には、「AUTOSAR導入を新規調達モジュール群の導入としてしか見ないのであれば、単なる負担にしかならないだろうに」と、欧州自動車メーカーやメガサプライヤー(この表現も最近はあまり耳にしなくなってきました)に所属するエキスパートの方々からあきれられ、嘲笑されたものです。

 「従来と同じことしかするつもりがない」のであれば、「従来と同じことしかできません」となるのは当然です。現状に疑問を持たずにいれば「解決したい課題」が思い浮かぶはずはないでしょうし、わずかな変化であっても「変更」というネガティブなレッテルが貼られた評価からのスタートとなることは、容易に想像がつくことです。

 AUTOSARは銀の弾丸ではありません。万能の解決策ではありませんし、無目的で口を開けて待っていれば何かを解決してくれるものでもありません。

 たとえきちんとまとまっていなくとも、「現状はこうなっていて、それでよいとは思っていない」と気付き、それを表現いただけるのであれば、そこからはおそらく、外部からも技術的な支援は可能なのですが、表現もしようとせずに「経営を動かすような、現実的でかつ魅力的な企画書を」といわれても、それは無理があります(まれに、経営層がそれらを偶然拾い上げてくれるなどして、幸運な方向に進むケースはあるかもしれませんが……)。

 例えば、本連載初期の第2回第3回では「AUTOSARに対する期待」「うれしさにつながるものの例」、第23回では「プラットフォームの安全保障」などをご紹介してきました。

 さて、皆さんはAUTOSARを使って、どんな課題を解決していきたいのでしょうか?

 第4回で書いたような「やらされAUTOSAR」のままで、「AUTOSARの使い手としての成長」は期待できるのでしょうか?

 マンネリ化したQCサークル活動レベルのボトムアップアプローチで出てくるような小手先の自動化などだけではなく、また、AUTOSARや安全/セキュリティへの対応を「ミクロなスコープの目標」にするのではなく、AUTOSARなどを、実現が難しそうなことを実現する(例:意味も分からずやっている仕事を、改めて検討し意味を見いだしてより良い内容に変えていく/無駄だと思っている仕事を、やらなくて済むように変える)ための「足掛かり」や「きっかけ」くらいに考えてみると、案外良いアイデアが出てくるかもしれませんし、幾つかの成功例では実際「AUTOSAR導入」(あるいは安全規格対応など)のキーワードを「レガシーを切り捨てる」ための格好の材料にしたというお話も伺ったことがあります。

 モビリティを取り巻く環境がこれだけ劇的に変化しているのですから、それを「足掛かり」や「きっかけ」にして、AUTOSAR導入という側面を見直してみるのもよいかもしれません。これだけの変化の中で「何もしなければ無罪」というわけにもいかないでしょう。不作為という言葉もあります。

まとめ

 第24回からスタートした、「スケジューラは分かるが、リアルタイムOS(RTOS)はいまひとつ」という皆さんに向けてのAUTOSAR CP(Classic Platform)入門のミニシリーズ、いかがでしたでしょうか? 残念ながら、あまりフィードバックをいただけておりませんので、これでひとまずは終わりにしたいと思います。

 次回は、R22-11のリリースに関するご紹介になる見込みです。AUTOSARが、R22-11のリリースイベントを2022年12月8日(現地時間)にオンラインで開催することを告知しています。参加費は無料なので、興味のある方はぜひ参加してみてください。

⇒R22-11リリースイベントの告知(AUTOSAR)

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