絞り込まれてきたイプシロン6号機打上失敗の要因、イプシロンSやH3への影響は:宇宙開発(1/5 ページ)
2022年10月12日のイプシロン6号機の打ち上げ失敗は、H-IIAロケット6号機以来、じつに19年ぶりに日本の基幹ロケットの打ち上げで起こった失敗になる。この約1カ月間の調査を経て、その要因はかなり絞り込まれてきた。今後の日本のロケット打ち上げプロジェクトにどのような影響が起こり得るかも含めて解説する。
日本の宇宙開発に衝撃が走った。2022年10月12日に打ち上げたイプシロン6号機が、飛行中に発生した異常により、指令破壊されたのだ。日本の基幹ロケットでの打ち上げ失敗は、H-IIAロケット6号機以来、実に19年ぶり。まだ原因が特定できたわけではないが、この1カ月で分かってきたことをまとめてみたい。
飛行中に許容できない姿勢誤差が発生
イプシロンは、固体3段+PBS(液体)の小型ロケットである。小惑星探査機「はやぶさ」などを打ち上げたM-Vロケットの後継として開発され、2013年9月に初飛行。これまでの5機は全て成功しており、今回が6回目の打ち上げだった。現在、日本では、このイプシロンと、大型のH-IIAが、基幹ロケットである。
イプシロン6号機は、この日、9時50分43秒に点火。第1段の燃焼終了、フェアリングの分離、第1段/第2段の分離、第2段の燃焼開始と、シーケンスは順調に進んでいた。しかし、第3段を分離する前に、目標姿勢からの大きな誤差(約21度)を検出。このまま飛行を続けても衛星を軌道に投入できないため、ここで指令破壊の信号を送信した。
第2段の姿勢制御には、3つの装置が関連している。「TVC」は、ノズルの向きを変えることで、ピッチ軸とヨー軸を制御するものだ。ただTVCだけだとロール軸が制御できないため、これは8基のスラスターを備える「RCS」が補助する。またTVCは燃焼時にしか使えないので、燃焼前と燃焼後には、RCSが3軸全ての制御を担う。
※3つ目は「スピンモーター」だが、今回の問題には無関係なので説明は省略する。
今回の姿勢異常は、第2段の燃焼が終了し、RCSが3軸制御しているフェーズで発生した。では、この姿勢異常はなぜ起きたのか。JAXAの調査で明らかになったのは、RCSの圧力データが正常でなかったことだ。
RCSのモジュールは機体の両側面(±Y軸)に搭載されているのだが、この片側(+Y軸)の圧力が上昇しておらず、機能していなかったとみられる。3軸を制御するためには、両側のモジュールを連携させて、スラスターを噴射する必要がある。しかし片側しか機能しなかったことで、機体のバランスが崩れてしまったというわけだ。
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