【DXで勝ち抜く具体例・その3】需給を拡大するビジネス:DXによる製造業の進化(6)(1/3 ページ)
国内企業に強く求められているDX(デジタルトランスフォーメーション)によって、製造業がどのような進化を遂げられるのかを解説する本連載。第6回は、第2回で取り上げたDXで勝ち抜く4つの方向性のうち「需給を拡大するビジネス」の具体例として、Fictiv、Sharing FACTORY、Rentio、GMSの取り組みを紹介する。
需給を拡大するビジネスとは?
前回は、DX(デジタルトランスフォーメーション)が進んだ未来に創造される「DX時代ならではのビジネスモデル」の1つの方向性として、「非効率を解消するビジネス」を紹介しました。今回は、「需給を拡大するビジネス」を取り上げます。
本連載の第2回で解説したように、DXは「モノやサービスの取引に対する“需給の拡大”」を可能とします。デジタル技術の進化と活用の拡大により、今までにはない売り方/買い方を提供できるようになるからです。そのコンセプトは、「余剰を売れるようにする」「買わなくても使えるようにする」「売る人/買う人を増やす」の3つに整理されます。
Fictiv――デジタルファブリケーション機器の余剰時間を売れる
Fictivは、特注品を作ってもらいたい発注者と、3DプリンタやCNC工作機械などのデジタルファブリケーション機器を持つ製造事業者をマッチングする米国のスタートアップです。2013年に設立後、中国をはじめとする諸外国への進出を果たすなど、国境を越えたネットワークの拡大を実現しています。
Fictivのサービスモデルは、前回取り上げたCADDiに少し似ています。発注者が図面データをアップロードし、諸条件を入力すると自動で価格が表示されるところは一緒です。
受注した製品は、提携先事業者の有するデジタルファブリケーション機器で製造されます。つまり、CADDiとは違ってデジタルファブリケーション機器で製造できるものしか受注できません。しかし、人手での加工を必要とする製品を対象外としたことで、価格の算定が容易になっただけではなく、提携先の技術力を見極めなくてもよくなりました。保有機器の型式が分かれば、何を製造できるのかを判定できるからです。国境を越えたネットワークの拡大を早期に実現できたのも、デジタルファブリケーション機器での製造に対象を限定したからといって相違ありません。
地理的な拡大は、Fictivの価値をもう一段高めることにもつながっています。特注品の納品先が遠隔地にあるのだとすれば、その近くにある提携先事業者のデジタルファブリケーション機器を活用することで輸送費を圧縮できるからです。本連載の第4回で紹介したOpenDeskと同様の機能性を有しているといってよいでしょう。
Fictivのネットワークにつながることは、提携先事業者のビジネスモデルにも影響を及ぼします。空き稼働が勝手に埋まり、収益を得られるようになるからです。Fictivのようなマッチングネットワークが広く普及したとき、そのような企業からの発注を想定してデジタルファブリケーション機器を新設する事業者が出てくるかもしれません。
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