危うい道は通らない、ルート配送最適化AIに熟練ドライバーの知見を導入:サプライチェーン改革
OKIは効率の良い配送計画をAIが立案する「コスト最小型ルート配送最適化AI」について、熟練運転手の配車技量の知見などを新たに盛り込む試みを行ったと発表した。配送遅延が生じ得るルートをあらかじめ排除するなどで、配送計画の精度を高める。
OKIは2022年10月31日、効率の良い配送計画をAI(人工知能)が立案する「コスト最小型ルート配送最適化AI」について、熟練運転手の配車技量の知見などを新たに盛り込む試みを行ったと発表した。配送遅延が生じ得るルートをあらかじめ排除するなどで、配送計画の精度を高める。
遅延リスクと過剰な分割配送について対策
これまでにOKIは、社長直轄組織であるイノベーション推進センターにおいて、物流分野におけるサプライチェーンの自動化を注力領域として、AIなどを用いた課題解決に取り組んできた。2020年5月から開始した同社とロンコ・ジャパンとの共創活動の中でコスト最小型ルート配送最適化AIを開発しており、2021年3月からは同AIを用いたトラックによる配送現場の実証実験を開始した。
コスト最小型ルート配送最適化AIは、OKIが独自に定義した「分割配送」の考え方に基づき、拠点と配送先間での燃料費や高速道路料金などの配送コストを最小化する配送計画を自動作成できるAIだ。ここで言う分割配送とは、一般的な配送方式に対して、1つの拠点に運ぶ荷物を2台以上の複数のトラックで分担して配送する方式を指す。これによってトラック1台当たりの積載効率を向上させ、走行距離や配送用の車両数を削減するとともに、これまで熟練の従業者しかできなかった配車業務を脱属人化する効果も期待できる。走行距離や車両数の削減効果は、実証実験の中でも確認されてきたという。
ただ、実証実験ではAIが作成した配送計画の表を、熟練運転手が手直しする様子が見受けられた。AIが選定する配送ルートの中に雪道で速度規制が頻繁に起こりやすい、路面凍結しやすいといったルートが含まれる場合、熟練運転手がそれらを除外する作業を行っていたためだ。これでは、AIが計算したコスト最小化の効果を十全に受けられなくなる。
さらに、分割配送における荷物の分割の仕方が過剰化することの弊害も生じていた。例えば、1つの店舗に対して何度もトラックが配送を行うことで誤配のリスクが高まる上、複数台のトラックが同時間帯に到着すると荷下ろしに時間がかかるといった問題が考えられる。
これらの問題を解決するため、OKIはコスト最小型ルート配送最適化AIに配送遅延リスクの高いルートをあらかじめ除外できる機能や、分割配送をコスト削減効果の大きなケースに絞って過剰分割を防止する仕組みなどを導入した。これによって、配送用車両15台、配送先50店舗の条件で実証実験を行ったところ、燃料費と高速道路料金を合計で約700万円削減することに成功したという。2021年3月時の実証実験では約360万円のコスト削減に実現したとしており、それと比較すると2倍近くの削減効果が出たことになる。
今後の展望について、OKIの担当者は「1つはTMS(輸配送管理システム)を提供している企業と連携して取り組みを展開すること。もう1つは、小売企業とも手を組んで分割配送の方式を広めていくことだ」と語った。
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