ロボカップ7年ぶり優勝の要因は、コロナ禍も乗り越えたCIT Brainsの挑戦:組み込み開発 インタビュー(1/2 ページ)
3年ぶりのリアル会場での開催となったロボカップの世界大会「Robocup 2022」。このRobocup 2022において、ヒューマノイドロボットで行われるキッドサイズリーグで優勝したのが千葉工業大学の有志メンバーを中心とするチーム「CIT Brains」だ。2014〜2015年連覇から7年ぶりの優勝はどのようにして実現したのだろうか。
ロボット開発の技術力を競う競技会の中で、広く知られているものの一つが「ロボカップ(Robocup)」だろう。ラジコンのように人の操作で動くロボットではなく、自分で考えて動く自律移動型ロボットによる競技会であり、1997年に愛知県名古屋市で開催された第1回から2022年の現在まで長い歴史を重ねてきた。
自律移動型ロボットによるサッカー競技「ロボカップサッカー」から始まったロボカップの目標は「西暦2050年までに、サッカーの世界チャンピオンチームに勝てる、自律移動のヒューマノイドロボットのチームを作る」である。当初は車両型ロボットで行っていたロボカップサッカーも、現在は「ヒューマノイドリーグ」でヒューマノイドロボットによるサッカーのチーム戦で競い合うようになっている。
これまで順調に開催規模を拡大してきたロボカップも2022年からのコロナ禍の影響を逃れることはできなかった。2020年のフランス・パリでの世界大会は中止され、2021年の世界大会はオンライン開催となった。しかし、2022年7月11〜16日に、3年ぶりとなるリアル会場を用いたロボカップの世界大会「Robocup 2022」がタイ・バンコクで開催された。このRobocup 2022において、ロボカップサッカーのヒューマノイドリーグのうち、身長60cm以下のヒューマノイドロボットで行われるキッドサイズリーグで優勝したのが、千葉工業大学の有志メンバーを中心とするチーム「CIT Brains」だ。
2007年からヒューマノイドリーグに参加してきたCIT Brainsは、2014年と2015年に世界大会のキッドサイズリーグで2連覇を果たしている強豪だ。しかし近年は、優勝から遠ざかっていた。今回の7年ぶりの優勝はどうやって実現したのだろうか。
コロナ禍で思いがけずチーム体制が一新、機体も刷新へ
CIT Brainsは、千葉工業大学を中心とする1〜4回生の大学生から構成されるチームだ。4回生は大学卒業と同時にチームを引退することになるが、その知見やノウハウは、ロボカップへの挑戦に取り組む中で3回生以下のメンバーに引き継がれていく。しかし、コロナ禍に見舞われた期間にロボカップの開催が制限されたことで、これまで通りとはいかない状況にあった。
CIT Brainsの顧問で千葉工業大学 先進工学部の未来ロボティクス学科 教授の林原靖男氏は「Robocup 2022に向けたチーム体制は、2019年時点の世界大会の中心メンバーが既に卒業しておりほぼ一新された状態になっていた。ロボカップに参加する海外チームは、大学生のクラブ活動ではないこともあって中心メンバーがそのまま残っているので、これはかなり不利な条件になるのではないかと考えていた」と語る。
ここでCIT Brainsは、一新されたメンバーでRobocup 2022に参加するに当たり、ヒューマノイドロボットの機体を刷新することも決めた。2016年から使用してきた機体の「GankenKun(頑健くん)」は、ヒューマノイドロボットが壊れやすいという課題を解決することを基本コンセプトとしており、試合で衝突や転倒をしても故障しないように“頑健”に設計されていることが特徴だった。
新たな機体となる「SUSTAINA-OP」は、GankenKunの壊れにくい特徴をさらに向上するとともに、ロボットの製作やメンテナンスが容易で長期間使用できる“サステナブル(持続性)”のあるものとすることがコンセプトとなった。「GankenKunを運用する中で100以上の課題が出てきていた。SUSTAINA-OPはこれらの課題の解決も図っており、剛性、耐久性、稼働安定性はかなり高いレベルを実現できた」(林原氏)という。
SUSTAINA-OPの名前のうち、SUSTAINAはサステナブルに由来しているが、もう一方のOPはオープンプラットフォームとして公開していくことを意図して名付けている。実際に、ハードウェアの設計データや設計過程などはGitHubを通じて公開している。
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