「この痕は?」「治具は問題ない?」中国人技術リーダーの迷答は自己判断が原因:リモート時代の中国モノづくり、品質不良をどう回避する?(7)(3/4 ページ)
中国ビジネスにおける筆者の実体験を交えながら、中国企業や中国人とやりとりする際に知っておきたいトラブル回避策を紹介する連載。第7回は、自分で考えられる範囲での最善の回答をしようとする、自己判断がとても強い中国人技術リーダーとのやりとりで生じた困ったエピソードを2つ紹介する。
自己判断の多い中国人との適切な対応方法
このような自己判断の多い中国人だが、決して悪気があるわけではないので、良い関係を保ち続けるためには、日本人が適切に対応していく必要がある。
前者の「鏡筒」のエピソードは、実は日本人が最も苦手とする対応が必要と考える。日本人には「一任する仕事のやり方」をする人が多く、この話の場合では「(原因が分かっていないことが)分かりました。私の要望は鏡筒表面に痕がないことですので、量産までには対処しておいてください」と言い、その場での原因の究明は妥協して諦めてしまい、その後の対処を一任してしまう人が多い。
中国でそれをしてしまうと、間違いなく量産においても痕は残ったままになっている。原因は妥協せずに究明し、必ずそれをつぶすことが大切である。希望する結果だけを伝えて、原因究明を一任することがあってはならない。
しかし、日本人は謙虚な人種であるため、中国人の強い自己主張や自己判断に根負けしてしまうことがあるのだ。よく筆者の研修の参加者から、「あまりしつこかったり深入りしたりすると、失礼にあたらないか?」と質問される場合がある。そのようなことは決してない。
中国人だって、自分が推定した自己判断であることは分かっている。その推定による回答で不十分ならば、妥協せずにちゃんとその旨を伝える必要がある。例えば、中国人が一般のモノを買うときの価格交渉はすさまじいもので、客は自分の買いたい価格を、店員は売りたい価格をお互いにケンカ腰に言い合うのである。本当に欲しい要望をちゃんと伝えず、簡単に妥協してしまうと、中国人の方が拍子抜けしてしまうくらいだと思ってよい。
後者の「治具」のエピソードでは、「治具は、本当にできているかな?」という不安がわずかにあったにもかかわらず、技術リーダーが治具担当に確認している声まで筆者は聞いたため、「まず、大丈夫であろう」と自己判断してしまっていたのだ。これ以上しつこく聞くことに、妥協してしまった結果ともいえる。この筆者の自己判断は、中国人技術リーダーのしたことと同じであったと思う。技術リーダーを非難できたものではない。今であれば、絶対に次の対応をしていたと考える。
- 最初に「あなたは治具を見ましたか? 見てなければ見てきてください」と確認する
- 次に、治具の写真を送ってもらう
- 最も良いのは、上記にプラスして治具を実際に使ってもらい、部品のサンプルを送ってもらう
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