歩くとAIがアドバイス、京セラが生み出す人間拡張技術:ウェアラブルニュース(2/2 ページ)
京セラは2022年10月13日、東京都内およびオンラインで記者会見を行い、同日発表した人間拡張技術の3つの新しいシステムについて説明した。
アバターを通じて円滑なコミュニケーション
存在の拡張を行うフィジカルアバターは、リモートでもその現場にいるような体験と存在感を実現する。コロナ禍に社内でリモートワーク、出社が混在した際に、コミュニケーションに関する課題が浮かび上がってきた中で出てきたアイデアだという。
フィジカルアバターは伸縮や回転、うなずきなどの動作を通じて意思を視覚的に伝えることができ、コミュニケーション動作を相手に応じて的確に行うことで違和感なくその場に溶け込む。頻繁に行う動作の自動化、発話者に対してフィジカルアバターの顔の向きを自動で追尾させることも可能だ。
PC、タブレット端末、スマートフォンから最適なUIでログインが可能となっている。360度カメラを搭載しており、フィジカルアバターの周囲の状況を的確に捉えることができる。音声の音量や方向を可視化する機能で、現場の音声の状況を視覚的に把握する。
京セラ 研究開発本部 フューチャーデザインラボ 第1研究課 責任者の杉本武士氏は「できるだけシンプルに作り、体験していただくことを目指しているため、現段階では表情もシンプルになっている。顔をシンプルにすることで、声が聞こえてくると何となく本人に見えてくるという効果があることも実験で分かっている」と話す。
どんなに集中していても聞き逃さないデバイス
聴覚拡張ヒアラブルデバイスは、人の耳で音を聞いている状態を再現するバイノーラルマイクと骨伝導イヤホンにAIシステムを組み合わせることで、人に代わって周囲の音への注意を払い、聞き逃してしまった音を聞き返せるデバイスとなる。これにより心に余裕を与え、集中や記憶など認知機能をサポートする。
人間は複数の情報にあふれた状況下で、無駄な情報を排して特定の重要な情報に注意を向ける選択的認知という行動を取っている。補聴器や収音機といった音自体を聞こえやすくするイヤホンデバイスは多く存在するが、作業に集中するなどして大事な情報を聞き逃してしまう問題に対してはあまり目が向けられてこなかったという。
同社 研究開発本部 フューチャーデザインラボ 主席技師の金岡利知氏は「われわれが開発する聴覚拡張ヒアラブルデバイスは複数の作業を同時に処理する日常生活のあらゆる場面で活躍し、現在、急速に市場が拡大している多機能イヤホンデバイスに新たな価値を与えることができる」と述べる。
現状では骨伝導タイプのイヤホンとしている。「耳のアシストというコンセプトから周囲の音も聞こえる骨伝導タイプにした。ただ、既存のイヤホンに付加する機能としての展開も考えている」(金岡氏)。
横山氏は「紹介した技術は全て研究開発の途中であり、他社も含めて共創、実証を進めながら適時に商品化に結び付けていきたい」と語る。人間拡張といっても、日常生活に浸透している眼鏡や補聴器、義手、義足などの既存技術も当てはまる。
シード・プランニングの調査によれば、国内の人間拡張市場規模は2025年に1兆円を突破するとされる。「われわれのプランとしては、これまでの商品、システム、周辺技術を統合し、独自技術だけでなく既に世に存在する多くの技術を取り入れながら、新しい価値を創ろうと考えている」(横山氏)。
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