故障検知アルゴリズムをその場で学習できるエンドポイント型AIチップを開発:人工知能ニュース
ロームは、クラウドサーバがなくても同一AIチップ上で学習する「オンデバイス学習AIチップ」を開発した。電子機器に搭載したモーターやセンサーの故障を、現地で低消費電力かつリアルタイムで予知できる。
ロームは2022年9月27日、クラウドサーバがなくても同一AI(人工知能)チップ上で学習する「オンデバイス学習AIチップ」を開発したと発表した。電子機器に搭載したモーターやセンサーの故障を、現地で低消費電力かつリアルタイムで予知できる。2023年度から同チップのAIアクセラレーターを搭載したICの製品化に着手し、2024年度に量産化を予定している。
同AIチップは、慶應義塾大学 教授の松谷宏紀氏が開発した、3層ニューラルネットワークによる「オンデバイス学習アルゴリズム」をベースとしたロームのAIアクセラレーター「AxlCORE-ODL」と、高効率8ビットCPU「tinyMicon MatisseCORE」などで構成する。これにより、数10mWの消費電力でチップ上の学習と推論が可能になった。
機器を設置した場所で、加速度や電流など入力データの「異常度」を数値化してリアルタイムで出力するため、エンドポイント型のAIシステムを構築できる。クラウドAIやエッジAI、従来のエンドポイント型AIはクラウド上の学習を必要とするが、同社のシステムは、クラウドサーバとの連携や事前のAI学習が不要だ。
同社は、9.0×9.0×1.2mmの試作AIチップ、無線モジュール「ESP32」、64kビットEEPROM、Arduino互換端子などを搭載した評価ボードも作製した。評価ボードの貸し出しにも応じており、モーターなどに搭載したセンサーとAruduino用センサーボードと拡張接続すると、PCモニターで実データや異常度を確認できる。
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