究極は人体拡張? 10m以上のワイヤレス給電で新たな世界を描くスタートアップの挑戦:組み込み開発ニュース(1/2 ページ)
米国スタンフォード大学発のスタートアップ企業エイターリンクは2022年9月21日、報道向けの説明会を開催し、同社の取り組みとマイクロ波ワイヤレス給電システム「AirPlug」の紹介を行った。
IoT(モノのインターネット)活用が広がり、ネットワークの無線化が進められているが、その中で唯一配線が残されていたのが電源供給である。こうした電源供給をワイヤレスで行う技術を開発したのが、米国スタンフォード大学発のスタートアップ企業エイターリンクである。
エイターリンクは2022年9月21日、報道向けの説明会を開催し、設立の経緯とマイクロ波ワイヤレス給電システム「AirPlug」の紹介を行った。
10〜20mの距離で1〜2mWオーダーの電力を供給
エイターリンクのワイヤレス給電技術はもともと、米国スタンフォード大学で同社の代表取締役 CTOの田邉勇二氏が研究してきたバイオメディカルインプラントにおいて、体内に埋め込んだデバイスに体外から電源供給を行うために開発された。この技術を医療分野だけではなく、より幅広く展開するために、同社の代表取締役/CEOである岩佐凌氏と意気投合し2020年8月に設立したのがエイターリンクである。
ワイヤレス給電の市場環境について岩佐氏は「複数の外的要因により市場が拡大している」と訴える。「IoTデバイスが爆発的な増加が進む中、IoTセンサー数は45兆個にもなるといわれている。こうしたセンサーの配線やバッテリー交換の実現性を考えた場合、ワイヤレス給電技術は必須となる。また、デバイスの消費電力の低下により、ワイヤレスで供給できる電力で駆動できるものが増えつつある。さらに、これらを背景に省令改正(電波法施行規則等の一部を改正する省令)が行われ、空間伝送型ワイヤレス電力伝送機器が使用できる環境が整ってきている」(岩佐氏)。
アンテナや回路、無線技術を掛け算で総合力に
ワイヤレス給電技術には、スマートフォン端末を配線なしで充電できるような技術も既に実用化されているが、これらの技術は大きな電力供給ができる一方で、数cm単位の近距離でなければ給電できない。エイターリンクが狙っているのは、小さな電力供給しかできないが、空間どこにいても給電できるという技術だ。開発したマイクロ波ワイヤレス給電システム「AirPlug」では、複数の送信機からのマイクロ波で、10〜20mの距離で、1〜2mWオーダーの電力を供給する。また、複数の送信機を活用することで角度依存も小さく、一定空間内で安定した電力を供給できる。
同社 代表取締役 CTOの田邉勇二氏は「マイクロ波ワイヤレス給電技術はさまざまな企業が開発をしているが、アンテナや基板の回路設計、電波通信などそれぞれのパーツの最適化を進め、これらを総合的に掛け算にできるところがエイターリンクの強みだ」と語っている。
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