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【DXで勝ち抜く具体例・その1】場を創造するビジネスDXによる製造業の進化(4)(2/3 ページ)

国内企業に強く求められているDX(デジタルトランスフォーメーション)によって、製造業がどのような進化を遂げられるのかを解説する本連載。第4回は、第2回で取り上げたDXで勝ち抜く4つの方向性のうち「場を創造するビジネス」の具体例として、PatientsLikeMe、OpenDesk、Seibii、Manbangの取り組みを紹介する。

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OpenDesk――世界中のデザイナーズ家具を手頃な価格で購入できる場

 英国のスタートアップであるOpenDeskも、家具のデザイナーや工場と、購入者をつなぐという「今までにはなかった場」を創造しました。2013年の設立以来、欧州や北米を中心としつつも、現在では日本も含めた全世界をカバーしています。

 OpenDeskの特長は、家具のデザイン(設計図)だけではなく、製作機能をも提供していることです。DIYを得意とする人でなければ、デザインだけを渡されても自力で家具を製作することは難しいでしょう。OpenDeskであれば、提携先の家具工場が代わりに製作してくれます。

 世界各地に提携先の工場が存在することも利点です。例えば、日本にいる人が英国のデザイナー家具を購入するとなると、輸送費も結構な金額になります。OpenDeskであれば、日本にある提携先の工場が製作してくれるので、トータルコストを抑えられるというわけです。

 OpenDeskのビジネスモデルとしての差別性を考えても、工場をネットワーク化したことの意義は大きいはずです。家具のデザインを提供するだけのマーケットプレースであれば、デザイナーの参加を得ることのみで成立します。画像や写真素材を提供するサイトが数多く存在するように、参入障壁は低く、他社の追随が多分に予想されます。

 しかし、家具工場のネットワーク化となると、単に参画を得るだけではなく、品質や保有設備などをチェックしなければなりません。納品先の近くにある工場での製作を特長とするのであれば、地理的な分散も考慮する必要があります。OpenDeskは、この手間をかけることによって、先行者優位性を築くことに成功したのです。

OpenDeskのビジネスモデル
OpenDeskのビジネスモデル[クリックで拡大]

Seibii――クルマを持ち込まなくてよい出張整備サービス

 Seibiiは、クルマの出張整備サービスを提供する日本のスタートアップです。2019年に創業後、わずか2年で整備回数が累計1万台を超えるなど、短期間で急速な成長を遂げました。

 バッテリーやタイヤの交換、ドライブレコーダーやバックカメラの取り付け、塗装のコーティングなどの整備を受けるためには、カーディーラーや工場などにクルマを持ち込む必要がありますが、Seibiiを利用すれば、この手間を解消できます。整備士がクルマのある場所まで来てくれるからです。整備サービスをディーラーや工場といった「リアルな場」から解放するビジネスといって差し支えないでしょう。

 整備士にとっても、Seibiiを介して仕事を受けるメリットは小さくありません。第一に、ディーラーや工場で整備をするのと違って、設備費や販管費を要さないため、同一の作業であればその分だけ自身の実収入が増えます。もちろん、より多くの整備を請け負うことでの総賃金の増加も見込めます。クルマの所有者との直接のコミュニケーションが増えることによって、仕事へのモチベーションが高まる人も少なくありません。

 Seibiiは、デジタル技術を活用し、クルマの所有者が「行く」のではなく、整備士が「来る」ビジネスに変えることで、提供と利用の双方のペインポイント(現状への不満や不便)を解消しました。将来、自動車整備におけるインダストリアルトランスフォーメーションを成し遂げた企業と称されるかもしれません。

動画が取得できませんでした
Seibiiのサービスによる整備作業の当日の流れ[クリックで再生] 出所:Seibii

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