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製造業DXの重要性は理解しても投資進まず、IT人材も足りない国内企業ものづくり白書2022を読み解く(2)(2/4 ページ)

日本のモノづくりの現状を示す「2022年版ものづくり白書」が2022年5月に公開された。本連載では3回にわたって「2022年版ものづくり白書」の内容を掘り下げる。第2回では国内製造業におけるDX進展の様子を見る。過去のものづくり白書では「ダイナミック・ケイパビリティ」の獲得が重要だと指摘していたが、現状はどうなのか。

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ダイナミック・ケイパビリティ強化に必須なデジタル技術

 2020年版と2021年版のものづくり白書では、「ダイナミック・ケイパビリティ」を強化するデジタル技術の1つとして5G技術が紹介されていた。加えて、2022年版ものづくり白書では、製造実行システム(ManufacturingExecutionSystem、MES)についても言及されている。MESの導入によって製造現場の人手不足や熟練技術者の技能継承、設備の稼働状況の可視化といった短期的な課題に対処できるだけでなく、生産人口の長期的な減少が見込まれる中での生産性の向上や、競争力の維持強化など、製造業が抱える中長期的な課題解決にもつながるとしている(図4)。


■図4:MESを取り巻く全体システム構成の例[クリックして拡大] 出所:2022年版ものづくり白書

 令和3年度に野村総合研究所とエンジニアリング協会が共同実施した調査によれば、調査対象の企業の約4割がMESを導入済みと回答している(図5)。一方でMESの導入や利活用が進まない企業もあり、その要因としては経営層に重要性が理解されていないこと、導入や利活用の推進部門が存在しない例があること、人材不足、投資対効果の説明が難しいことが挙げられている。


■図5:MESの利用状況[クリックして拡大] 出所:2022年版ものづくり白書

 同調査では、MESの導入や利活用は(1)工程や業務に応じた個別のシステムの導入、製造現場の見える化やIoT(モノのインターネット)プラットフォームの導入といった実績データの収集、分析から始め、(2)5Gの活用や計画系機能の拡充、ERPなどの上位システムとの連携を行い、(3)データ分析やフィードバック、標準化したMESの全社展開に進む、という3フェーズで進めることが有効だとしている(図6)。


■図6:MES導入のロードマップ(例)[クリックして拡大] 出所:2022年版ものづくり白書

世界的な国際標準開発競争への取り組みも必至

 DXによる競争力向上には、国際標準化への取り組みも重要である。5Gの国際的な標準仕様は、3GPP(3rdGenerationPartnershipProject)にて検討されており、2025年までのロードマップが示されている(図7)。5G以外の国際標準化活動全般の動向については、欧州、米国、中国などの国や地域が、それぞれの強みを生かしながら、戦略的に国際標準化活動を行っている(図8)。日本の製造、サービス事業者も、このようなトレンドを踏まえた上で、自社の技術の強みや、今後訪れるであろう社会の姿を念頭に置きつつ、世界的な国際標準開発競争に向き合う必要があるとしている。


■図7:3GPPによる標準化スケジュール(Release17、Release18)[クリックして拡大] 出所:2022年版ものづくり白書

■図8:各国・地域における国際標準化戦略[クリックして拡大] 出所:2022年版ものづくり白書

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