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日立大みか事業所は地域全体でCO2削減に挑む、先進工場が目指す脱炭素の在り方製造業×脱炭素 インタビュー(2/3 ページ)

日立製作所の大みか事業所は2022年6月、「大みかグリーンネットワーク」という構想を発表した。注目したいのが、大みか事業所を中心にサプライチェーン企業や地域企業などを巻き込み、「地域社会全体での成長可能な脱炭素」を目指すというコンセプトだ。スコープ3の対応に頭を悩ませる製造業も多いが、同事業所ではどのように達成を目指すのか。

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技術だけでなく地域経済にも注目

MONOist 地元企業だけでなく、行政や研究機関なども巻き込むのですね。

入江氏 地域全体で連携し取り組むというのがポイントだ。日立市は製造業が盛んで、CO2排出量の約半分が製造業由来となっているが、これを削減して環境にやさしい地域を作ろうと検討している。同市の企業や産業支援センターなどが集まってコンソーシアムを作り、脱炭素における中小企業の課題感などを調査し、議論を進めている。

 研究機関とは話を始めた段階だが、技術的な話題だけではなく、地域経済や都市の在り方などのテーマも扱いたいと考えている。技術だけ進展しても、脱炭素の成果を地域経済にうまくつなげられなければ「成長可能な脱炭素」は実現できない。

「脱炭素のデジタルツイン」を構築する

MONOist こうした取り組みを大みか事業所で進めることに、どのようなメリットがあるのでしょうか。

入江氏 大みか事業所は製造ラインや製造物のデジタルツインをベースにさまざまな施策に取り組んでPDCAサイクルを回すシステムがあり、これを強みとしている。Lighthouseに認定されたのも、課題を認識して、解決策を創出、実装し、また次の課題に取り組んでいく、という仕組みづくりができていたというのが大きかったと思う。

 同様の仕組みが脱炭素でも生かせると考えている。つまり「脱炭素のデジタルツイン」を構築する。大みか事業所には約数百カ所に電力センサーを設置しており、工場エネルギー管理システム(FEMS)によって消費電力を見える化している。今後、工場内の電力系統モデルも見える化して、再生可能エネルギーの供給量が増加した場合に備えて、電力変動をシミュレーションできる仕組みも作る。

 さらに、ここに製造ラインや設計データなどのデータを合わせることで、工場全体のCO2排出モデルを作成し、デジタルツインを構築する。これによって、脱炭素実現に向けたアイデアを次々に出して、検証し、洗練させていくサイクルが生まれると考えている。


大みかグリーンネットワークの展開構想[クリックして拡大] 出所:日立製作所

MONOist 大みか事業所としてはどのような脱炭素施策を展開しているのでしょうか。

入江氏 再生可能エネルギーの導入や活用以外では、大きく分けて2つの施策がある。

 1つは先にも述べたが、EcoAssist-Enterpriseの大みか事業所への適用だ。大みか事業所の環境データを、ダッシュボード上で見える化する。事業所各施設のCO2排出量の大きさや削減施策などを可視化する他、排出量シミュレーションを通じて脱炭素試作の排出量削減効果を検証することもできる。

 2つ目はLCAの可視化、つまり製品単位でのGHG排出量の見える化だ。システム上では、どのサプライヤーからデータを提供されているかが分かる。示されている排出量が実測値である1次データか、排出原単位から推計した2次データかも分かる。サプライチェーン全体で進めている削減努力の成果を可視化できる。

EcoAssist-Enterpriseによる見える化(左)と製品単位でのGHG排出量の見える化システム(右)[クリックして拡大] 出所:日立製作所

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