トヨタ式TQMの体系と管理上のポイント(その1):トヨタ式TQM×IoTによる品質保証強化(2)(3/3 ページ)
高い品質を特徴としてきたはずの国内製造業だが、近年は品質不正や重大インシデントなどの発生が後を絶たない。本連載は、品質管理の枠組みであるトヨタ式TQMと、製造現場での活用が期待されるIoT技術を組み合わせた、DX時代の品質保証強化を狙いとしている。第2回は、トヨタ式TQMの体系と管理上のポイントについて紹介する。
3.ボトムアップ日常管理(QCサークル)
3.1 QC:品質管理
QCはQuality Controlの略で品質管理のことを言います。ここでいう品質管理には、以下の4つの目的があります。
- 「品質第一の製品を作る」
- 「顧客満足度と従業員満足度を向上させる」
- 「品質を保持するための作業工程の管理・改善を行う」
- 「品質・納期・コストなどの問題を解決するための方法を模索する」などの活動を行う
3.1.1 「品質第一の製品を作る」
まずは顧客の要求する品質を満たす製品をつくることになります。不良品は市場にださないことが前提です。
3.1.2 「顧客満足度と従業員満足度を向上させる」
次に品質が良くても顧客が満足しなければいけないということになります。そのためには製品を提供する現場作業者が満足して業務に従事していることが重要になります。そのための作業環境を提供することが重要です。
3.1.3 「品質を保持するための作業工程の管理・改善を行う」
品質を保持するためには作業する工程毎の要素作業まで分解して5M・1Eの視点や7つのムダの観点で工程を常にチェックし改善を行います。設備を安定して稼働させるための設備保全管理も重要です。
3.1.4 「品質・納期・コストなどの問題を解決するための方法を模索する」などの活動を行う
さらに品質だけでなく、品ぞろえを良くした平準化の考えで納期通りに安定して製品を提供することや製品の原価低減を図っていく活動を行うことに発展していきます。
3.2 QCサークル
QCサークルは小集団活動として自発的に職場改善に取り組む活動です。単調になりがちな現場作業を創造性のある仕事に変革することで、品質と生産性を向上することが目的です。QCサークル活動は実践を通じて人間の能力向上や職場のモチベーションアップにつながります。
3.2.1 基本理念
QCサークルは一般的に次の3つを基本理念として掲げています。
- 人間の能力を発揮し、無限の可能性を引き出すこと
- 人間性を尊重して、生きがいのある明るい職場を作ること
- 企業の体質改善と発展に寄与すること
3.2.2 役割と特徴
人間尊重の精神に支えられたグループ活動指向の自主的な小集団活動により、問題解決の方法としてQCストーリーに沿って、QC七つ道具を使って、分析と改善を行います。
3.2.1と3.2.2をまとめますと、小集団活動によって「人間性の尊重」「和をもって尊しとなす(上も下も和らいで話し合いができれば、何事も成し遂げられないことはない)」「3人寄れば文殊の知恵」の精神で、チームワークを高めることができます。
次回は、「トヨタ式TQMの体系と管理上のポイント(その2)」として、TQMの視点について掘り下げていきます。
筆者紹介
株式会社アムイ 代表取締役
山田 浩貢(やまだ ひろつぐ)
NTTデータ東海にて1990年代前半より製造業における生産管理パッケージシステムの企画開発・ユーザー適用および大手自動車部品メーカーを中心とした生産系業務改革、
原価企画・原価管理システム構築のプロジェクトマネージメントに従事。2013年に株式会社アムイを設立し大手から中堅中小製造業の業務改革、業務改善に伴うIT推進コンサルティングを手掛けている。「現場目線でのものづくり強化と経営効率向上にITを生かす」活動を展開中。
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