EVのモデリングを「ミニ四駆」で考える〜バッテリー、モーター、走行の連成問題、現象を本質的に捉えてシンプルに表現〜:1Dモデリングの勘所(10)(2/4 ページ)
「1Dモデリング」に関する連載。前回行った「ミニ四駆」の構成要素の原理理解、定式化を受けて、今回はミニ四駆全体系のモデリングを行い、解析を実行する。さらに現象を理解する方法としてモデリング結果を図で表現することの有用性に触れる。最後に、「Modelica」によるミニ四駆のモデリング例を示す。
パラメータの決定
図1の赤字以外のパラメータは事前に決めておく必要がある。以下、要素ごとにその決定方法について述べる。
バッテリーに関するパラメータ
ここでは、単3アルカリ一次電池を直列に2個使用しているのでE=3[V]とする。内部抵抗はカタログ値から、RB=0.8[Ω]とする。
モーターに関するパラメータ
図2に、モーターに関するパラメータの決定方法を示す。ここでは、モーターの特性を横軸にモータートルクTM、縦軸にモーター回転数ωMをとって示している。電池電圧、電池の内部抵抗は既に決定済みであるので、トルク定数KT、起電力定数KE、モーター内部抵抗RMを決める必要がある。今、無負荷状態(モータートルクゼロ)のときのモーター回転数をω0とすると、
となり、これから、
で起電力定数が求まる。次に、回転数ゼロのときのモータートルクT0とすると、
となり、これから、
でモーターの巻き線抵抗が求まる。なお、相反定理により、KT=KEである。以上により、モーターのパラメータは決定できる。なお、無負荷時の回転数、回転拘束時のトルクの計測方法はいろいろと考えられる。意外と身近な手段で可能な場合もあるので考えてみてほしい。
ギアに関するパラメータ
対象としているミニ四駆のギア構成を図3に示す。モーター出力軸から、車輪軸までの回転数比を計算すると5分の1となるので、ギア比は、
となる。また、ギアとギアのかみ合い時に効率が10%低下すると仮定すると、この場合、4カ所のかみ合い部があるので、最終的にギア効率は、
となる。
走行系に関するパラメータ
走行系に関しては、転がり抵抗、空気抵抗係数はハンドブックから決定することにし、ミニ四駆の質量、前面投影面積は実測により求めることができる。
以上のようにして求めたミニ四駆のパラメータを図4に示す。
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