現代家庭は既にミッションインポシブル、パナソニックが目指す家事解放の新たな形:製造業がサービス業となる日(2/3 ページ)
パナソニック ホールディングスは「くらしのウェルビーイング」の実現に向けた取り組みを強化。2022年7月29日には、同社 代表取締役 社長執行役員 グループCEOの楠見雄規氏、執行役員でくらしソリューション事業本部長である松岡陽子(ヨーキー松岡)氏が共同インタビューに応じ、これを実現する1つの取り組みとして、Yohanaサービスについて説明した。
ここからは、パナソニックのウェルビーイングへの取り組みと、Yohanaとのシナジーや課題などについて、楠見氏、松岡氏への一問一答の内容を紹介する。
「プライバシー情報も出したい」という要望
―― Yohanaは基本的に人がサポートする形だが、AIなどのソフトウェア技術はどう貢献しているのか。
松岡氏 私自身のバックグラウンドがAIやロボティクス技術の研究開発なので、これらを活用しながらサービス構築を進めている。ただ、こうしたバックグラウンドがあるからこそ思うのは、AIは進化しているものの、まだ人間に頼ってもらえるほどのものはできていない。だからこそYohana Membershipでは、人に入ってもらって、これらを補っている。ただ、Yohanaを活用するユーザーが増え、こなす用事が増えれば増えるほど、そのデータが増えていき、AIでできることも増えていく。人間とAIを組みあわせることで“スーパーヒューマン”となり、より快適にサポートできることも増えていく。
―― 米国ではどういう家庭がYohanaサービスを利用しているのか。
松岡氏 米国ではYohana Membershipは、サブスクリプション型で月額249ドルで提供している。ユーザーファーストで、各家庭の苦労しているタスクの解決を狙っているが、バリューを提供できていれば価格は問題にならない。実際に価格について「高い」という声はまだない。共働きで忙しく、親の面倒などもあるなど、やることが多くあるという層により多く導入してもらっている。こうしたターゲット層はパナソニックグループ全体としてもあまり変わらない。
―― 米国でサービスを実際に行ってみてトラブルはなかったのか。プライバシーの問題などはなかったのか。
松岡氏 プライバシーに関する情報を出したくないという方向での問題ではなく、出したいという方向での問題があったことが印象的だった。最初はプライバシーに関わるところまで情報をもらうような関係を構築するのに時間がかかると思っていたが、有料サービスになるとすぐにプライバシー的に深い情報まで渡されるようになった。例えば、パスポートの更新を行うのに必要な情報を集めることや、買い物を代わりに行うために購入サイトのIDを渡されるというようなケースだ。こうした動きは、トライアルではなく有料サービスになると急に現れたものだ。
ただ、そうした情報を受け取るまでに時間がかかると考えていたため、Yohana側で十分にプライバシーセキュリティを確保できる体制がまだ整っていなかった。そこで対応する仕組みを急いで構築した。先進技術を取り入れながら、これらの体制強化も進めている。
「なくては生きていけない」サービスへ
―― カード会社のコンシェルジュサービスとの違いは何か。競合との差別化についてどう考えているか。
松岡氏 似ている面はあるが、カード会社のコンシェルジュサービスは、どちらかといえば旅行やレストランなど非日常を支えるサービスだと捉えている。一方でYohanaは家族の日常を支えるものだ。家事の代行や蜂の巣の駆除など、家族の問題をワンストップで相談できるサービスだという点に違いがある。そういう意味では現時点では厳密な競合相手はいない。成功のポイントはユーザーファーストであるということで「このサービスがないと生きていけない」と感じてもらえる存在になっていくことが重要だ。
今後はAIなどを活用して世界中の企業が狙ってくるところだとも認識しているが、多くの企業が参入することで市場が盛り上がり、より多くの家族が助けられることになるのであればそれでよいと考えている。
―― 日本でも年内にYohana Membershipを開始するとのことだが、家事を他人に委ねない考え方が一般的な日本で、啓蒙活動をどのように進めていくのか。
松岡氏 実は私自身もそういう点で苦労してきた。大学教授時代に子どもが生まれ、仕事に復帰する際に、立ちいかなくなり家事サービスを利用するようになったが、最初の3カ月は自分で家をきれいにしてから、家事サービスに入ってもらっていた。こうしたことが苦しくなり、あらためて何を犠牲にするべきかということを自問自答した。自分で家をきれいにする時間と体の不自由な人のためのロボット開発に費やす時間とのどちらが大切か、どちらが自分でしかできないことなのかを考えて、納得したうえで、家事サービスに委ねるようになった。ただ、他の人に委ねたくない部分は線引きして夫婦で行っている。例えば、子どもの送り迎えなどはその1つの例だ。Yohana Membershipを日本で展開する中でも、こうしたアドバイスなども含めて提案できるようにしていきたい。
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