半固体と全固体、何が違う? 固体電池を材料構成から整理する:今こそ知りたい電池のあれこれ(15)(2/3 ページ)
「半固体電池」とはいったいどんな電池のことでしょう。今回は、そんな分かるようで分からない「固体電池」について、その材料構成を整理しながら解説していきたいと思います。
(1)ゲルポリマー型
ゲルポリマー型とは、一般的には「リチウムポリマー電池」や「リポバッテリー」などと呼ばれるタイプの電池です。高分子ゲルに電解液を含有させて流動性を下げることで従来の液系電池よりも液漏れや発火を抑制させることを狙った構成になっています。
現在はフッ化ビニリデン系共重合体からなる高分子ゲル電解質を用いた電池がスマートフォンなどをはじめとする多くの製品に使用されています。
昨今、中国メーカーを筆頭に電気自動車(EV)用途で「固体電池」が採用される事例が多く報道されています。特に2021年1月9日、中国のEVスタートアップ企業であるNIOが「NIO Day 2020」にて2022年に150kWhの固体電池搭載モデルを発売すると発表したのが印象的ですが、こういった「固体電池」の多くはリチウムポリマー電池(ゲルポリマー型の半固体電池)を改良したものであると考えられます。
2022年5月、中国の電池メーカー国軒高科は第十一届科技大会にて、エネルギー密度360Wh/kgの車載用半固体電池を量産化すると発表しました。この半固体電池を搭載した場合、航続距離は最大1000km、時速0-100kmの加速時間は3.9秒を達成できるとされています。2022年内には実際に車載用途で採用される見込みで、大規模製造ラインの建設も進められており、2023年には本格的な量産開始予定とされています。
こういった最新のゲルポリマー型の半固体電池において注目すべき点は、採用されるゲルポリマーの「機能性」です。例えば、難燃性ゲルによる発火リスクの低減や、高エネルギー密度だが不安定な活物質の保護被膜として機能するポリマーによる電池容量の増大など、特徴的な機能を有するゲルポリマーを採用することで、従来のリチウムポリマー電池よりも優れた電池特性を発現させるといった傾向が見られます。
また、以前に本コラムでも「バイポーラ型電池」の一種としてご紹介した「全樹脂電池」も電解質がゲルポリマーであるという点からは、このゲルポリマー型に区分できるかと思います。
(2)クレイ型
クレイ型とは、正極/負極の電極材料に電解液を練り込んだ粘土(クレイ)状の材料を用いた電池です。
従来の液系リチウムイオン電池の場合は電極材料を混合した「スラリー」と呼ばれる合材塗料を金属箔の上に塗布/乾燥する製造工程が一般的です。これに対し、クレイ型の半固体電池の場合は電極材料の結着を担うバインダーや、先述のゲルポリマーといった高分子材料を使うことなく、半固体的な粘土状に練り上げた材料を用いた厚膜電極という特徴的な構造になっています。この構造によって高安全性、長寿命、低コストを実現しています。
日本では京セラが住宅用蓄電システム向けの電池として開発に取り組んでいます。
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