OTとITのノウハウを注入したDXを、横河デジタルの新たな挑戦:製造業×IoT キーマンインタビュー(1/2 ページ)
横河電機は2022年7月1日に、製造業の経営から現場までを見渡したDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する経営コンサルティング企業である横河デジタルを設立。同年10月1日から営業を開始することを発表した横河デジタルの代表取締役社長となった鹿子木宏明氏と、横河電機 フェローで横河デジタルの取締役に就任した勝木雅人氏に話を聞いた。
横河電機は2022年7月1日に、製造業の経営から現場までを見渡したDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する経営コンサルティング企業である横河デジタルを設立。同年10月1日から営業を開始することを発表した。制御分野のリーディングカンパニーである横河電機がなぜDX推進の経営コンサルティング企業を立ち上げたのか。横河デジタルの代表取締役社長となった鹿子木宏明氏と、横河電機 フェローで横河デジタルの取締役に就任した勝木雅人氏に話を聞いた。
本連載の趣旨
ITmedia産業5メディア総力特集「IoTがもたらす製造業の革新」のメイン企画として本連載「製造業×IoT キーマンインタビュー」を実施しています。キーマンたちがどのようにIoTを捉え、どのような取り組みを進めているかを示すことで、共通項や違いを示し、製造業への指針をあぶり出します。
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部分最適から全体最適へ
MONOist 横河デジタル設立の狙いを教えてください。
鹿子木氏 製造業は、熟練技術者の引退や人手不足、グローバル化の進展とそれによるコスト圧力の高まり、サプライチェーンの混乱、サステナビリティへの対応など、複雑な問題を抱えている。
横河電機はプロセス製造業を中心にOT(Operational Technology、制御技術)に強みを持つが、最近ではIT(情報技術)も含めたさまざまなソリューションを提供し、プロセス製造業のDXに貢献するソリューション提供を強化してきていた。
ただ、DXへの取り組みが広がる中、従来の改善の動きが工場内だけではなく企業全体や企業間へと広がっている。そこで個々のソリューションによる部分最適だけでなく、経営視点での全体最適を求める声が高まってきていた。
経営視点でDXを進めるといっても、個々の部門や立場によってDXの対象範囲や目的は変わってくる。同じDXという言葉で語られていても、目的に応じたさまざまな仕組みがある。全体最適で正しくDXを進めるためには経営課題からそれを切り分けてソリューション導入を進めるコンサルテーション領域を強化する必要があった。
そこで、DXに特化し、経営コンサルティングからシステム実装、運用、保守までをワンストップで提供する専門企業として新会社を設立するという流れになった。
MONOist 従来はDXへのソリューションも横河ソリューションサービスを通じて展開してきていたと思いますが、これまでの体制と新体制でどういう点が変わるのでしょうか。
鹿子木氏 横河ソリューションサービスでは、横河電機グループにおいて現場の生産制御から経営情報システムまで幅広いソリューションを提供している。DXに関連するさまざまなソリューションも取り扱ってきたが、基本的には各分野におけるソリューションベースでの提案や提供が中心となっていた。
先述したように経営課題から個々の問題を切り分け、解決策を示すような動きが広がる中で、個々の部門レベルでのアプローチでは解決できない問題も多くなってきていた。そこで、経営課題からDXを推進する専門組織として、役割を切り分けた形となる。
ただ、実際には、横河ソリューションサービスとは緊密に連携してさまざまな形のDXを推進していく。DXを推進する中で必要な個々のソリューションについては横河ソリューションサービスで実現できることも多いからだ。
横河デジタルでは、特に経営コンサルティングサービス、AI(人工知能)やIIoT(産業用IoT)、クラウドやサイバーセキュリティなどのITインフラ、ソフトウェアサービスの開発と提供、これらのトレーニングプログラム提供などに注力する。
OT領域での実績と製造業としてのDXの経験が強みに
MONOist DXについてのコンサルテーションは多くのコンサル企業でも力を入れています。横河デジタルの強みについて、どう考えていますか。
鹿子木氏 1つはOTについての知見やノウハウを持つということだ。製造業における経営課題を最適に見極め、解決につなげていくためには、先進のデジタル技術の知見だけではなく、OTの知見がなければ難しい。
横河デジタルでは、横河グループとしての豊富なOT領域の実績がある。デジタル技術の活用だけでなく、これらのOT領域での課題解決まで含めた形でシステムの立案や実装などができる点が特徴だ。
もう1つが、横河グループ自体が製造業であり、製造現場を知り尽くしており、自らDXに取り組んできた経験を持つことだ。実際にDXを進めてきた中での難しさをさまざまな面で把握している。例えば、技術的な側面だけでなく、組織や人的な面での難しさなども自らの経験を通じて理解しており、製造業の現状に合わせた地に足のついた提案ができる点も強みだ。
勝木氏 製造現場では設備の老朽化と技能継承の困難、さらに頻繁な仕入れ変更などによる原材料品質のばらつきなど厳しい環境にさらされている。その中で奮闘している現場の人を助けなくてはいけない。
横河デジタルでは、制御機器から基幹業務システムまで全て提供できる。原材料の品質のばらつきが起こった際も、われわれがサプライチェーンの間に入って、代替データを用いて秘匿事項を守りながら調整を図ることもできる。中間的な立場だからこそできる。
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