ブレグジット後の英国で加速するポストコロナ時代のデータ駆動型保健医療改革:海外医療技術トレンド(85)(3/4 ページ)
本連載第70回や第83回で、ポストコロナの時代における欧州連合(EU)のデータ駆動型健康戦略やデータ越境利用の共通ルールづくりを取り上げたが、Brexit(ブレグジット)後の英国は、どのように対応しているのだろうか。
デジタル化の次のステップを模索する英国の保健医療行政
このように、長年、保健医療データ利活用のための技術的対策の導入が行われてきた英国では、コロナ禍を契機に、制度的仕組みの改革に向けた動きも本格化している。
例えば、DHSCは2021年11月23日、「NHS変革の心臓部におけるデータ、デジタル、技術の配置」と題する独立レビュー報告書を公表した(関連情報)。DHSCは、NHSイングランド&NHSインプルーブメント(NHSEI)、NHSX(X)、NHSデジタル(D)などから構成される国民保健サービス(NHS)が、幅広い医療システムの変革を先導し、よりよい市民の保健医療を提供する統合ケアシステム(ICS)を支援することを目的としてレビューを実施しており、その結果をとりまとめたものが今回の報告書である。
本報告書では、表1に示す通り、改善の余地がある6つの課題領域を挙げている。
表1 英国保健・公的介護省(DHSC)のNHS独立レビュー報告書が指摘する課題領域[クリックで拡大] 出所:UK Department of Health & Social Care(DHSC)「Independent report: Putting data, digital and tech at the heart of transforming the NHS」(2021年11月23日)を基にヘルスケア研究会作成
そして、上記の6つの課題解決に向けて、表2に示す通り、9つの提言をとりまとめている。
表2 英国保健・公的介護省(DHSC)のNHS独立レビュー報告書における提言[クリックで拡大] 出所:UK Department of Health & Social Care(DHSC)「Independent report: Putting data, digital and tech at the heart of transforming the NHS」(2021年11月23日)を基にヘルスケア研究会作成
なお、DHSCは、本報告書公表前日の2021年11月22日、NHSXとNHSデジタルを、NHSイングランド&NHSインプルーブメント(NHSEI)に新設される変革局(Transformation Directorate)に統合する方針を表明している(関連情報)。これにより、NHSEI傘下にあるサイバーセキュリティプログラムや、NHSデジタル傘下のデータセキュリティセンター(DSC)、NHSX傘下のサイバーセキュリティチームも再編される見通しである。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.