セルラーIoTモジュール世界トップシェアのQuectel、満を持して日本市場に進出:組み込み開発ニュース
中国のQuectel Wireless Solutionsが、本格展開を始める日本国内向けの事業戦略について説明。セルラーIoTモジュールの出荷台数ベースの世界シェアで26.6%とトップに立つ同社だが日本国内での展開が遅れていた。今後は、2021年3月に開設した日本オフィスを中核に、世界全体と同等のシェアを目指して事業展開を拡大していく方針だ。
中国のQuectel Wireless Solutions(クエクテル、以下Quectel)は2022年6月28日、オンラインで会見を開き、本格展開を始める日本国内向けの事業戦略について説明した。2010年創業の同社だが、IoT(モノのインターネット)機器向けセルラーモジュールの出荷台数ベースの世界シェアでは26.6%とトップに立っている(2021年第4四半期のCounterpointの調査に基づく)。しかし、中国と欧米を中心とする海外の売上高構成比率ほぼ半々となる中で、日本国内での展開が遅れていた。今後は、2021年3月に開設した日本オフィスを中核に、世界全体と同等のシェアを目指して事業展開を拡大していく方針だ。
Quectel CEOのパトリック・チアン(Patrick Qian)氏は「日本の顧客の品質要求水準は極めて高い。これまで、セルラーIoTの他、Wi-Fi、GNSSなどのモジュール、アンテナ、などモジュール製品のラインアップを拡充し、中国や欧米で実績を重ねる中で技術力を高めて、日本で本格的に事業を展開する確信ができた。世界第3位の経済規模を持つ日本にしっかり浸透していきたい」と意気込む。
Quectelの2021年の売上高は前年比1.8倍の17億3800万米ドル(約2360億円)で、2017〜2021年の年平均成長率も約61%と急成長を遂げている。中国に5カ所、海外に3カ所R&Dセンターを展開し、研究開発者数は約2300人に上る。生産については、協力工場への委託から自社生産への移行を進めており、2022年12月には常州の新工場が稼働する予定だ。同工場における生産の自動化にも積極的に取り組んでいる。
製品ポートフォリオとしては、GSMから3G、LTE、5G、LPWA(低消費電力広域)ネットワークなどに幅広く対応するセルラーIoTモジュールの他、Wi-Fi、GNSS、アンテナなどの無線通信関連ハードウェアを展開する。特にセルラーIoTモジュールでは、クアルコム(Qualcomm)の世界最大のIoTパートナーとなっており、この他メディアテック(Mediatek)などのチップセットも手掛けている。
さらに、SIMカードやチップSIM、ソフトウェアSIMといったSIMによる接続サービスの提供に加えて、クラウドベースのIoTプラットフォームの展開も開始した。無線通信デバイスの設計でボトルネックになりやすいアンテナの設計、無線通信機能を搭載する製品そのものの設計/製造を行うODM/EMS、日本における技適など各国で異なる電波法制への準拠などを行う認証といったサービスも提供している。IoTの活用に必要なソリューションのほとんどを網羅しつつあるといえるだろう。
事業展開を進めている産業分野としては、モビリティ、スマートエネルギー、決済、スマートシティー、ワイヤレスゲートウェイ、スマート農業、インフラ監視、スマート工場、ヘルスケア、セキュリティなどを挙げる。特に、モビリティについては、日産自動車やテスラ(Tesla)が中国内での事業展開でQuectelを採用しており、これらの実績を基に日本の自動車メーカー、ティア1サプライヤーなどに提案していきたい考えだ。
Quectel 日本担当リージョナルセールスディレクターの佐藤正信氏は「セルラーIoTモジュールのニーズの中心はLTEだ。現在は、LTE-Cat4が主流だが、今後はLTE-Cat12や16などのLTE-Advanceに移行するだろう。さらに、5Gも見据えていく必要がある。LPWAネットワークでは、Cat-M1を展開していく。日本の顧客がグローバル展開を検討する際には、世界基準でのグローバルの展開力やコスト競争力で貢献できるだろう」と述べている。
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