インバーターの損失を30%低減しながら体積は半分、日立がEV向けに新技術:電動化
日立製作所と日立Astemo(アステモ)は2022年5月24日、EV(電気自動車)向けに省エネと小型化を両立した薄型インバーターを実現する基本技術を開発したと発表した。パワー半導体をプリント配線基板と一体化して集積することで電力配線を簡素化し、スイッチ動作によるエネルギー損失を同社従来品(100kWクラス)から30%低減するとともに、従来比50%の小型化を実現した。
日立製作所と日立Astemo(アステモ)は2022年5月24日、EV(電気自動車)向けに省エネと小型化を両立した薄型インバーターを実現する基本技術を開発したと発表した。パワー半導体をプリント配線基板と一体化して集積することで電力配線を簡素化し、スイッチ動作によるエネルギー損失を同社従来品(100kWクラス)から30%低減するとともに、従来比50%の小型化を実現した。
さらに、パワー半導体の電力配線の溶接工程を不要とするなど、部品点数や組み立てに必要な工程を削減し、インバーターの生産工程を含めたライフサイクルでのCO2排出削減に貢献するとしている。従来の構造のインバーターでは、EVで扱う電流が増大した場合にパワー半導体や周辺部品を大型化する必要があり、エネルギー損失の増加や組み立て工程の複雑化が課題となっていた。
従来の構造では、パワー半導体とインバーター回路部品を別々に組み立て、配線で接続する必要があった。そのため、インバーター全体が複雑な構造となり、エネルギー損失の低減やインバーターの小型化が難しかった。今回開発した基本技術では、インバーター回路部品を組み込んだプリント配線基板上にパワー半導体を一体化して集積することで、発熱の問題を回避できるようにした。配線を簡素化して、交流回路の配線に誘導される電圧の大きさを左右するインダクタンスを低減できるため、エネルギー損失を大幅に改善することが可能になった。
また、従来のインバーターでは、パワー半導体に大電流を供給するバスバーが多用されており、溶接などの接続作業が必要だった。そのため、部品点数や組み立てに必要な工程が多く、生産効率の向上が課題となっていた。開発した基本技術では、パワー半導体と回路部品を薄型のプリント配線基板上に実装し、バスバーを省略できるようにした。溶接など生産工程でのエネルギー消費を低減し、ライフサイクルでのCO2排出を削減する。
開発した基本技術の実用化に向けた取り組みを加速し、EVの急速充電システム、送電システムなど幅広い用途で薄型インバーター技術を提供していく考えだ。薄型インバーターは「人とくるまのテクノロジー展 2022 YOKOHAMA」(2022年5月25〜27日、パシフィコ横浜)で展示する。
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