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日本の倉庫事情に“ローカライズ”、中国新興企業のACRが国内展開加速物流のスマート化(1/2 ページ)

近年、国内メーカーだけでなく、中国など海外企業による日本国内市場への参入が活発化している。中国深センに拠点を置くスタートアップ、HAI ROBOTICSもその内の1社だ。同社製品のデモを見学できる「HRJテクニカルセンター」を取材した。

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 倉庫業務などの自動化のため普及が進む物流ロボット。最近では、国内メーカーだけでなく、中国など海外企業による日本国内市場への参入も活発化している。中国深センに拠点を置くスタートアップ、HAI ROBOTICSもその内の1社だ。2021年8月に日本法人のHAI ROBTICS JAPANを設立して以来、国内展開を加速している。

 同社は倉庫内のピッキング業務を自動化するACR(自律型ケースハンドリングロボット)を主力商品として展開する。2022年3月1日に開設した「HRJテクニカルセンター」(埼玉県入間郡)では、ACRの「HAIPICK A42」(以下、A42)と「HAIPICK A42N」(以下、A42N)、高速な入出庫を可能にするワークステーション「HAIPORT」などを展示しており、実稼働を想定したデモンストレーションを見学できる。

ケースも段ボールも扱える

 A42はHAI ROBOTICSが同社のスタンダードな製品として位置付けるACRだ。サイズは1600×1000×4330mmで、本体重量は480kg。機体全体の最大可運搬重量は180kg(最大300kgまでカスタマイズ可)、ケースの最大可運搬重量は30kg(最大50kgまでカスタマイズ可)。ピッキング可能な高さは400〜5200mmである。フル充電には1時間半程度かかり、急速充電時には40分で完了する。導入コストは規模によって異なるが、HAI ROBOTICS JAPAN 代表取締役の劉竑氏は「1台当たり500万〜600万円で、一般的なマテリアルハンドリング機器の半額程度で提案できるよう努めている」とした。

 A42NはA42とほぼ同一のスペックだが、A42の場合、ピッキングできるのがケースだけであるのに対して、A42Nは段ボールとケースのどちらも扱えるといった違いがある。加えて、A42Nはピッキングのため、カメラを通じて周辺環境を3Dで把握する仕組みなどを備えている。


A42Nの外観。画像右のHAIPORTからケースをローディングした後の様子[クリックして拡大]

 A42Nを活用することで、入庫後に段ボールを開封し、製品をケースに移し替えるといった手間を省ける。また、劉氏は「近年、オムニチャネルの広まりに伴い、リアル店舗の在庫とEコマース在庫を同一倉庫で扱うため、段ボールとケースが混在する倉庫も増えている。これらを単一のACRソリューションで一括運用できるというのは魅力的だ」と語った。

 棚搬送ロボットなどと比較したACRの利点として、劉氏は「棚搬送ロボットの場合、その時点ではピッカーが必要としていない商品なども棚ごと持ってきてしまう可能性がある。重要なのは搬送能力だけでなく、ピッカーがいるワークステーションまで商品をどのように持ってくるかという点だ。これによって、ピッカーの作業効率は大きく変わる」と語った。このため、HAI ROBOTICSのACRには、受けたオーダーを効率よくさばくとともに、商品棚からワークステーションまでの最短かつ最適なルートを自動選択する、独自のノウハウを取り入れたアルゴリズムを実装したという。


商品棚の間を走行するACR[クリックして拡大]

 この他にもACRの場合、約5m程度の商品棚を設置することで、倉庫の上部空間を有効利用しつつ、保管面積を可能な限り抑えるといったメリットもある。また、劉氏は「ACRは短期間で導入しやすく、マテリアルハンドルを用いた一般的な自動倉庫と異なり完全な自動化ではないため、需要に合わせた倉庫規模の縮小や拡張も行いやすい」と利点を述べた。実際にある企業の事例では、従来1900m2であった保管面積を1000m2にまで減らし、該当区画内の作業者の人数も20人程度から4人にまで減らすことができたという。

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