サプライヤー数は“トヨタ越え”、シーメンスが挑む6万社超のCO2排出量削減:海外事例で考える「脱炭素×製造業」の未来(3)(2/4 ページ)
国内製造業は本当に脱炭素を実現できるのか――。この問いに対して、本連載では国内製造業がとるべき行動を、海外先進事例をもとに検討していきます。第3回は幅広い分野で製品、ソリューションを展開するシーメンスを取り上げ、6万5000社を超えるサプライヤーにどのように脱炭素の取り組みを働きかけているのかを解説します。
6万5000社の排出量をどう削減するのか
スコープ3に関する、この目標は現実的なのでしょうか。シーメンスは約145カ国で、6万5000社のサプライヤーを世界中に抱えています。これらのサプライヤーから、2020年度は約270億ユーロ(約3兆7400億円)相当の商品とサービスを購入しています。トヨタ自動車グループのサプライヤーが約4万社であることからも、その規模の大きさは容易に想像できます。
目標を達成するには、サプライヤーごとにCO2排出量削減の目標設定をしてもらう必要があります。シーメンスはサプライヤーに対し、現時点のCO2排出量、また将来的な削減計画の提出を求めています。しかし、もちろんサプライヤー自身も2次請け、3次請けのサプライヤーから原材料、部品を仕入れていますので、目標の合意においても、削減計画の実行においても、その難しさは容易に想像できます。
シーメンスはティア1サプライヤーを中心とした数千社に対して、段階的にカーボンウェブアセスメントを実施する方針としています。
なお評価ツールは、ドイツのSDGsコンサルティング会社Systainが開発した「estell」を採用しています。シーメンスが主体となってツール操作方法の説明会、オンデマンド動画配信や操作マニュアル配布、オンラインのQA窓口など、スケールを見越した手厚い支援を、現在も継続して行っています。
カーボンウェブアセスメントも実施
実際のカーボンウェブアセスメントの内容を紹介します。アセスメント項目は大きく分けて、エネルギー効率、再エネ、自家発電/空冷、分散型電源、物流、従業員の出張、リサイクルに分類されます。
各アセスメント項目に対する自社の現状、今年度の目標、5年後の目標をプルダウン選択で回答します。すべて必須項目ですが「未実施」「試用期間中」「対象外」など選択しやすい内容のため、回答入力のハードルは低い印象です。
意欲的な取り組みを進めているサプライヤーに対しては、より定量的な回答を求めています。また年次CO2排出レポートをCDP※へ提出することも促しています。シーメンスは回答内容をもとに将来の調達方針を決めると明言していることから、サプライヤーがより詳細な入力をする動機付けは十分と思われます。
※:英国のNGO、環境影響に関わる情報開示システムを運営
なお、2020年時点でサプライヤー全体の約20%にあたる1万社が自社のCO2排出量とその削減計画を提出しています。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.