東芝、英国で量子暗号通信の商用向けメトロネットワークを試験的に提供開始:量子コンピュータ
東芝は2022年4月27日、東芝デジタルソリューションズとBTグループと共に、同月26日から英国のロンドンで、量子暗号通信の商用向けメトロネットワークのトライアルサービスを提供開始したことを発表した。最初の顧客である国際会計事務所のアーンスト・アンド・ヤングは、ロンドン東部のカナリー・ワーフ地区とロンドン・ブリッジ周辺地区間の拠点間接続での利用を予定しているという。
東芝は2022年4月27日、東芝デジタルソリューションズとBTグループ(以下、BT)と共に、同月26日から英国のロンドンで、量子暗号通信の商用向けメトロネットワークのトライアルサービスを提供開始したことを発表した。最初の顧客であるコンサルティング企業のアーンスト・アンド・ヤング(EY)は、ロンドン東部のカナリー・ワーフ地区とロンドン・ブリッジ周辺地区間の拠点間接続での利用を予定しているという。
東芝は今回のトライアルサービスを通じて、量子鍵配送(QKD)がどのように安全にデータを拠点間で転送できるかを示して、量子暗号通信ネットワークが顧客企業にもたらす効果を明らかにするとしている。
今回発表の商用向けメトロネットワークは、BTの子会社であるBritish Telecommunicationsが運用を行う。同じくBTの子会社であるOpenreachが提供するプライベートファイバーネットワークと、東芝デジタルソリューションズが提供するQKDシステム、鍵管理システムによる、専用の高帯域エンドツーエンド暗号化リンクを含む、さまざまな量子暗号通信サービスを提供する。
メトロネットワークはロンドン市内で事業を展開する多くの顧客企業をつなぎ、通常の光ファイバーを用いたQKDにより、実拠点間での重要情報のデータ通信を安全に行えるようにする。東芝は「QKDは今後の量子コンピューティングを用いたサイバー攻撃による脅威からネットワークやデータを守るために必要不可欠な重要な技術だ」(プレスリリースより)としている。
英国政府は2020年に量子対応経済の発展を推進する方針を発表した。東芝は、量子技術は英国の経済的な繁栄と安全保障に大きな価値をもたらすとして、今回のメトロネットワークはそうしたネットワークを築く一歩になり、「英国の量子対応経済の成長を活気づけるものとなる」(プレスリリースより)と説明している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 他社比50倍の高速通信を実現、東芝グループが持つ量子暗号通信技術の強み
東芝デジタルソリューションズは2021年8月19日、量子コンピュータ関連技術をテーマとした「東芝オンラインカンファレンス2021 TOSHIBA OPEN SESSIONS」を開催した。本稿では特に、東芝グループが保有する量子暗号通信技術に焦点を当てた講演の内容を抜粋して紹介する。 - 量子コンピューティングは製造業でも活用進む、その可能性と現実
次世代のコンピューティング技術として注目を集める「量子コンピュータ」。製造業にとっての量子コンピュータの可能性について、ザイナス イノベーション事業部 部長で量子計算コンサルタントの畔上文昭氏に、製造業での量子コンピューティング技術の活用動向と現実について話を聞いた。 - 国内量子コンピュータの市場調査結果を発表、2030年度に2940億円規模に
矢野経済研究所は、国内量子コンピュータ市場に関する調査結果と将来予測を発表した。市場規模は、2021年度は139億4000万円の見込みで、将来的には2025年度に550億円、2030年度に2940億円に達すると予測する。 - その名も「kawasaki」、国内初のゲート型商用量子コンピュータが稼働
東京大学とIBMは、日本初導入となるゲート型商用量子コンピュータ「IBM Quantum System One」が稼働を開始したと発表。設置場所は「新川崎・創造のもり かわさき新産業創造センター」で、東京大学が設立した量子イノベーションイニシアティブ協議会に参加する慶應義塾大学や、日本IBMを含めた企業11社を中心に活用を進めることになる。 - 数年後に古典コンピュータを超える量子コンピュータ、IBMは事業化に舵を切る
日本IBMが量子コンピュータに関する取り組みの最新状況について説明。IBMが1970年代から研究を続けてきた量子コンピュータの現在の開発状況や、日本での事業展開、今後の実用化に向けた取り組みなどについて紹介するとともに、「量子コンピュータの事業化が既に始まっている」ことなどを訴えた。 - 国内11社が量子技術応用の協議会を設立へ「産業応用でも世界をリードする」
量子技術による社会構造変革を目指す民間企業11社は、業界の垣根を越えて量子技術を応用した新産業の創出を図るための協議会である「量子技術による新産業創出協議会」の設立に向けた発起人会を開催。今後は2021年7〜8月の協議会設立に向けて、より多くの企業の参加を目指して具体的な準備を進めていく方針である。