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この素晴らしいDXセキュリティに祝福を!事例で学ぶ製造業DXセキュリティ対策入門(8)(1/4 ページ)

社内DXセキュリティプロジェクトチームのリーダーに任命された、ABC化学薬品新卒6年目の青井葵。元工場長の変わり者、古井課長の手助けも得て、製造業がDXプロジェクトと併せて進めるべき「DXセキュリティ対策」を推進していく本連載。最終回となる今回は、工場セキュリティとIoT農薬散布ドローンのセキュリティという2つのプロジェクトを通じてDXセキュリティの勘所を探る。

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 国内製造業で進む、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)、クラウドなどを活用した「DXプロジェクト」。分かりやすい価値を生み出すDXに対して、取り組みが遅れがちなのがセキュリティ対策です。

 そこで本連載では、国内中堅化学薬品メーカーのABC化学薬品に勤める新卒6年目の青井葵を主人公に、製造業がDXプロジェクトと併せて進めるべき「DXセキュリティ対策」について解説します。

⇒連載「事例で学ぶ製造業DXセキュリティ対策入門」バックナンバー

本連載の登場人物

青井葵(あおいあおい):ABC化学薬品のセキュリティ問合せ担当から会社全体のDXセキュリティのプロジェクトに大抜てきされた。新卒6年目。人当たりがよく、元気印の愛されキャラ。趣味は旅行、ラノベ・アニメ鑑賞。


古井静三(ふるいせいぞう):ABC化学薬品のセキュリティ担当課長、元工場長で現社長の黒川とは盟友関係。工場長時代に大病を患い2年ほど職場を離れたあと、趣味のPCの知識を生かして、数年前にセキュリティ部門の担当課長として職場復帰。いつもひょうひょうとしていてつかみづらい変わり者。趣味は無線、PC自作、釣り。


黒川洋(くろかわひろし):ABC化学薬品の社長、老舗の中堅化学メーカーにしては珍しい50代社長。いつも柔和な笑みをたたえていて穏やかな風貌だが、前社長が高く評価した切れ者の一面もある。趣味はジャズ、クラッシック鑑賞、ゴルフ。


井之辺紫音(いのべしおん):ABC化学薬品の子会社であるABCアグリ開発部のリーダー。現在、ドローンを用いたIoT農薬散布機の開発に取り組んでいる。仕事が早く優秀だが、気分屋で他人への要求が高いため、周囲からは難しい人物としてみられている。趣味は、カメラ、ミニ四駆、SF鑑賞。


※)編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物、団体などとは一切関係ありません。

先行き不透明な時代を乗り切るために

 ある日突然社長に呼ばれてDXセキュリティプロジェクトのリーダーになってから、そろそろ一年になろうとしている。紆余(うよ)曲折あって、簡単には進まなかったものの、工場セキュリティ、IoT農薬散布ドローンのセキュリティともに、予算と人員を確保できて、なんとか前に進みだした状態だ。今日は急に課長に呼び出されたのだけど、なんだかいやな予感がするなぁ。

いやぁ、忙しいのにわざわざ時間取ってくれてありがとう。青井さん相変わらず元気そうで、体調も良さそうで何より。オンラインではなく直接話すのは久しぶりだね。


はい。ここ最近は、ABCアグリのオフィスでドローンのセキュリティ対策の検討をしていましたから、私も本社への出社は久しぶりです。


 取りあえず、悪い話ではなさそうかな。相変わらず、課長は何考えてるか分からないからなぁ。

しかし、ここ数年で世の中はずいぶんと変わってしまったねぇ。


はい、コロナ禍もここまで続くとは思っていなかったですし、本当に先行きが不透明で、何をよりどころにしてビジネス検討したらよいのか分からないです。


そうだね、最近の半導体不足で、ネットワークやセキュリティ機器の入手も困難になっているし、青井さんの工場プロジェクトにも影響が出ているのかな。


そうでもないです。機器ベンダーの協力もあって必要数を確保できそうです。これまでの調達は値段ありきで、最後まで競わせて、とにかく安いものを選ぶといったやり方だったのですが……。


あー、耳が痛い痛い。当時はコスト削減が全てだったからね。


 そうか、古井課長は、以前工場長だったっけ。

昔のやり方を責めているわけではないですよ。ただ、今回のプロジェクトでは、私たちから要求仕様を出して、対応可能なベンダー選定を行ってから導入に向けた議論をしていたので、必要な機器をあらかじめ確保できたという側面があります。


なるほど、そこは私たちの古い体質が改善した効果と言ってもいいのかな。


そうですね。ベンダーの担当者の方から「これまでの単なる機能比較や価格ではなく、今回の案件に対するソリューション価値を評価してもらってうれしかった。関係者が皆やる気になっています」と言っていただきました。


ふむふむ。逆に言えば、これまではやる気になれなかったわけだ。


そうでしょうね。私がベンダーの立場だったら、値段だけで評価されているところを優先しようとは思わないですし。


まあ、一昔前は、ネットワークやセキュリティ機器は、どこも同じようなものだし、ベンダー側もコストで頑張る代わりに、継続的に発注してくださいといった日本的なおもてなし文化が通用したのだろうけど。


顧客とベンダーの関係性が密過ぎるのは、もろ刃の剣ですよね。良い点としては、中長期的な安定運用が期待できますが、反面、ビジネス環境が変わったときに、お互いにドラスチックな変化に踏み出しにくいので、共倒れになってしまう危険性もあります。


今の不透明なビジネス環境を考えると、後者のデメリットが大きくなってきてるんだろうね。


そうですね。ベンダーとの関係だけでなく、従来のやり方を先入観なしに見直して、柔軟に対応できる組織やシステムを作っていかないと、先行き不透明なビジネス環境を乗り切れないと感じます。


さすがDXセキュリティのリーダーも板についてきたね。これなら安心だな。


 何が安心なのだろう。なんかいやな予感がする。

ところで、課長、今日のご用件は何でしょうか。


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