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プロジェクター市場半減の衝撃、カシオの生きる道は“組み込み”へ組み込み開発 インタビュー(2/3 ページ)

コロナ禍もあってプロジェクター市場が急減している中、カシオ計算機は独自のプロジェクター技術を生かすべく、「プロジェクションAR」向けに用いられる組み込みプロジェクションモジュールを新規事業として立ち上げた。現在、最も強い引き合いがあるのが、スマートファクトリー向けの作業ガイドだという。

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レーザー&LED光源による小型軽量化が独自性に

 カシオが、組み込みプロジェクターを“オンリーワンビジネス”として事業化する上での独自性が、レーザーとLEDの組み合わせによる半導体光源技術である。一般的にプロジェクターの光源技術はLEDとレーザーに分かれる。まず、LED光源は、台湾や中国のメーカーが多く参入しているテレビ代わりに用いられるポケットプロジェクターなど低輝度向けになっている。高輝度を求める場合、LED光源は集光効率が悪くなることもあり、1000lm以上のプロジェクターではあまり用いられていない。

カシオの半導体光源技術とレーザー光源、LED光源の比較
カシオの半導体光源技術とレーザー光源、LED光源の比較[クリックで拡大] 出所:カシオ計算機

 一方、青色レーザーと蛍光体を組み合わせるレーザー光源は、プロジェクターに広く用いられてきた高圧水銀ランプと同等の数千lmクラスの高い輝度を実現できる。高圧水銀ランプは、光源の点灯や消灯に時間がかかる、寿命が短い、ランプを捨てづらいなどの課題があったため中輝度〜高輝度のプロジェクターへの採用が広がっている。ただし、レーザー光源もサイズが大きくなってしまうという課題があった。

 カシオは光源としての高圧水銀ランプの課題を解決すべく光源の半導体化に着手した。そして2010年に実用化したのが、レーザーとLEDを組み合わせた半導体光源技術である。青色レーザーと蛍光体から成るレーザー光源に赤色LEDを組み合わせることで、LED単体やレーザー単体の光源と比べて大幅な効率化を実現。特に、同社が中核とする2000〜4000lmのビジネスプロジェクターにおいてその高い効率が大きな特徴になっていた。

カシオのレーザー&LE光源の構成
カシオのレーザー&LE光源の構成[クリックで拡大] 出所:カシオ計算機のWebサイト

 さらに、このレーザー&LED光源に加えて、投影方式にDLP(Digital Light Processing)を採用した。「液晶プロジェクターと比べた場合、液晶パネルを冷やすための冷却ファンが不要、液晶パネルへのほこりの付着を防ぐフィルターが不要で、これらは組み込みプロジェクションモジュールとして展開する上でも大きなメリットになっている」(古川氏)という。

 そして、ビジネスプロジェクターで培ったレーザー&LED光源とDLP投影方式を生かして開発したのが組み込みプロジェクションモジュールの「LH-200」である。表示サイズ60〜70インチに対応する輝度2000lmのプロジェクションモジュールとして世界最小最軽量で、外形寸法はA5サイズの幅215×高さ43×奥行152mm、重量約1kgを実現した。

 また、製品やシステムに組み込んでの利用を想定し、0〜40℃という民生機器向けプロジェクターよりも幅広い動作温度範囲を確保し、フィルター不要のDLP投影方式を基に独自の防塵(じん)設計も行っている。古川氏は「組み込み用途の場合、LED光源を用いた小型プロジェクターが検討されるものの明るさが不足する。その一方で、レーザー光源プロジェクターは、サイズが大きく消費電力も大きいので組み込み用途に向かない。これらに対して、当社の組み込みプロジェクションモジュールは、組み込み用途においてオンリーワンの独自性があると考えている。国内生産拠点である山形カシオの高精度組み立てが可能な技術力も大きい」と強調する。

オンリーワンで強みのあるモジュールを提供する
オンリーワンで強みのあるモジュールを提供する[クリックで拡大] 出所:カシオ計算機

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