保険会社がなぜロボコンに? 異色の参戦者が語る「自分でつくる」大切さ:ETロボコン(4/4 ページ)
組み込み開発の技術力などを競い合うETロボコン。2021年に開催された同大会には、保険会社という“異色”の企業が参戦した。同社はなぜ、ロボコンに参加したのか。三井住友海上火災保険の担当者に話を聞いた。
「つくる」という本質は変わらない
MONOist 参加メンバーの感想はどうでしたか。
谷口氏 プログラミングに触れたことがないメンバーにとってはいい刺激になったようです。
また、保険業界では、他業界でエンジニアが当たり前に使用しているツールやOSS(オープンソースソフトウェア)開発、コミュニティー開発などの手法を取り入れていないことも少なくありません。ETロボコン参加に際しては、これらの文化も取り入れて、実際に体験してもらいました。そういう文化が「メディアなどで見聞きしたことはあるけれども、自分には遠い世界」ではないと知ってもらいたかったのです。それしかやり方を知らないので、そう思い込んでいるだけだと理解してほしい。
メンバーには、内向きに閉じこもった考えを持ってほしくありません。組み込み開発でもスパコンを使った最先端の予測モデル開発でも、「つくる」という本質的な部分では共通している側面があると気付いてもらおうとしました。
MONOist 苦労した点はありましたか。
谷口氏 参加メンバー間でも開発経験に差があったので、教育内容をそれに合わせて選択するのがやや難しいところでした。ただ、ETロボコンは競技結果だけでなく、審査員への説明資料も評価対象になります。このため、保有スキルに応じた役割を割り当て、誰もが役割を持って主体的に参加しやすい環境づくりができました。例えば、コンサルティング経験のあるメンバーは、審査員に伝わりやすい審査資料の作成を担当してもらうなどです。
また、分からない点は、おのおので教え合うという文化が自然と生まれていましたが、この点では私が特に何か働きかけたわけではありません。メンバーに恵まれただけです。最終的には、GitHubなどを参照しつつ、自分で簡単なコードを書いて走行体を試走させてみるなど、開発ツールの使い方が分かるようになっていました。
MONOist ETロボコン2022にも出場されるとのことですが、意気込みを聞かせてください。
谷口氏 新規メンバーの数はまだ分からないですが、チームの裾野は広がるはずです。ロボコンを人材育成のパイプラインと位置付け、有意義な取り組みができるよう、意識して取り組んでいきたいと思っています。
「人材育成」と一口に言っても、教育者側は膨大な時間をかけて準備をしなければなりませんが、ETロボコンという目標があることで、その準備もしやすくなる。ありがたいことだと思います。
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