“使えない協働ロボット”打破へ、「COBOTTA PRO」で目指したもの:協働ロボット(1/2 ページ)
デンソーウェーブは2022年3月に協働ロボットの新製品「COBOTTA PRO」シリーズを発表。新製品の紹介を含めて商品説明会「DENSO Robotics Expo 2022」を東京、大阪、愛知の3会場で展開した。高速動作が可能で簡単に使えることが特徴の協働ロボットの開発のポイントについて、デンソーウェーブ ソリューション事業部 FAシステムエンジニアリング部 部長の澤田洋祐氏に話を聞いた。
デンソーウェーブは2022年3月に協働ロボットの新製品「COBOTTA PRO」シリーズを発表。新製品の紹介を含めて商品説明会「DENSO Robotics Expo 2022」を東京、大阪、愛知の3会場で展開した。高速動作が可能で簡単に使えることが特徴の協働ロボットの開発のポイントについて、デンソーウェーブ ソリューション事業部 FAシステムエンジニアリング部 部長の澤田洋祐氏に話を聞いた。
「遅くて高い」という協働ロボットの課題を解決
「COBOTTA PRO」シリーズは従来の協働ロボットの課題解決を目指し、協働ロボットの用途拡大を目指したものだ。協働ロボットは、人と同じ作業スペースで作業を行うためにトルクセンサーなどさまざまな安全性をもたらす機能が必要な一方、作業スペースが限定されコンパクトさが求められるため、高速動作に必要な精度が得られず作業スピードを“遅く”設定する場合が多かった。結果として、柵が不要で省スペースではあるが、作業スピードが通常の産業用ロボットに比べて遅く、価格も高いという製品になりがちだった。工場などの作業現場側からすると、費用対効果を考えると使いどころに迷う製品だったといえる。
デンソーウェーブでは、協働ロボットとして小型の「COBOTTA」を2017年から展開しているが、これは小型の可搬性を生かし、従来はロボットを使わなかったオフィス環境のような新たな用途拡大を目指したものだった。産業用途での協働ロボットの開発に当たっては、あらためて幅広いユーザーにヒアリングを行った。その中でまずはこの「遅い」という点の解決を目指したという。
デンソーウェーブ ソリューション事業部 FAシステムエンジニアリング部 部長の澤田洋祐氏は「人との協働の可能性がなく柵が設置でき、通常の産業用ロボットが使用できるような環境であれば、協働ロボットではなく産業用ロボットを使用した方がよいのは間違いない。ただ、柵が設置できない環境や人と作業スペースを共有した方がよい場面なども製造現場では数多く残されている。こうした環境で使用することを考えた場合、協働ロボットだからといって作業効率を二の次にするわけにはいかない。そこに挑戦する必要があると考えた」と語っている。
特に重視したのは、作業速度と共に高い加速度を与えた場合でも精度を維持できるようにしたという点だ。「ロボットが作業時間を短縮するためには、より短い時間で最高速度に達する加速度は重要だ。しかし、協働ロボットでは最高速度はもちろんだが、特に加速度を低く設定している場合が多い。加速度を上げるとたわみなどで精度が維持できないため、スペック上の最高速度で動かせていない場合がほとんどだ」と澤田氏は課題を指摘する。
そこで、デンソーウェーブでは「COBOTTA PRO」シリーズの開発に当たり、高い速度と加速度でも振動を抑制できる軽量で高剛性のアームを新規設計した。また、協働ロボットには、人との衝突を検出できるようにトルクセンサーが組み込まれているが、このトルクセンサーの剛性が不足しているために、高い速度と加速度が発揮できない面もあった。そこで、トルクセンサーも新規開発し、最大TCP(ツールセンターポイント)速度2500mm/s、繰り返し精度±0.04mm(COBOTTA PRO 1300)という高速動作でも正確な動作を可能とした。
澤田氏は「高い加速度でも精度高く動作できることでサイクルタイムを大きく短縮できる。当社産業用ロボットの前世代モデルと同等クラスの作業効率は実現できるようになっている」と語る。
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