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産業用スマートグラスはIT/OTの「結節点」になれるか、米国発新興企業の展望スマートファクトリー(2/3 ページ)

現在、産業用スマートグラスは国内外の多くのメーカーが展開している。その中で着実に国内販売実績を積み上げている企業がRealWearだ。2015年に米国で創業したスタートアップで、同社のスマートグラスは全世界で約5万台を超える販売実績を持っている。ただ、国内市場参入当初は顧客に導入を渋られていた時期もあったという。そこから販売台数を伸ばした要因と、産業用スマートグラス市場の今後の展望などを聞いた。

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 デバイスの重量は従来機の3分の2程度に抑え、また、デバイス両端を約1センチ小さくすることで小型化も図った。伊藤氏は「これによって1日8時間のフルシフト勤務中、ずっと着用していても疲れにくいデバイスになった」と説明する。

 バッテリーも必要に応じて交換可能な仕組みに変え、外した場合にも5分程度予備電池でシステムを落とさず稼働するホットスワッピング機能を搭載した。この他、CPUは従来の「Snapdragon 626 Pro」から「Snapdragon 662」に、RAMは3GBから4GBに、ストレージ容量は32GBから64GBに変更しており、「認識としては『頭につけるタブレットPC』と思ってもらえるよう、ハードウェアの性能強化を図った」(伊藤氏)という。


従来機との比較。ハードウェアのアップデートを図った[クリックして拡大] 出所:RealWear Japan

無償Web会議ツールの普及が追い風に

 伊藤氏はスマートグラスの利点について「作業者が見ている場所を的確に撮影、録画できる点が強みだ。以前から現場の記録保全のため、カメラで撮影して記録を残すというプロセスは存在したが、スマートグラスであればカメラの役割を代替した上で、作業を省力化するとともに、現場作業員の数を減らせる」と強調する。

 ただ、2018年の国内市場参入当時は、保証付きのHMT-1で約33万円(当時)という価格が心理的障壁となったのか、「カメラやスマートフォンで十分」と導入を見送られるケースも少なくなかったという。その潮目が変わったのが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が感染拡大した時期だった。

 「ちょうど2019年末から試しに1、2台購入するという企業が出始めていたところに、COVID-19による社会情勢の変化が後押しした格好だ。現在は国内事業所でスモールスタートで使用開始し、2〜3台導入している企業が多い。例えば、ある自動車メーカーには10台購入してもらい、国内とブラジルの2拠点にあるエンジンパーツの生産ラインに導入した。従来は生産ライン上でエラーが生じると、現場作業者がスマートフォン上のFaceTime(フェースタイム)などを通じて熟練技術者から指示を受けていたが、これをスマートグラスで置き換えた」(伊藤氏)

 また伊藤氏は、RealWearの利用者拡大を後押ししたもう1つの大きな要因として、COVID-19によって、Android OS対応の、無償のWeb会議ツールが急速に企業に広がったことを挙げる。特に利用者拡大において大きな役割を果たしたのがTeamsの存在だ。COVID-19感染拡大以降、Web会議システムとしてTeamsを全社的に採用している企業は多い。Teamsを使えばアプリケーション自体の利用料金以外にはサービスの追加費用無しで、スマートグラスを通じた遠隔作業支援が行えるようになる。

 有償の通話アプリケーションを導入する必要がなく、コストを低減できることから、RealWearの国内ユーザーの約80%はTeamsを利用しているという。加えて、RealWearでは2021年からはZoomに対応する無償アプリケーションなどもリリースしており、スマートグラスの導入障壁を下げる取り組みを進めている。一方で伊藤氏は、「当社がパートナーと協力して開発している有償アプリケーションにも大きな強みがある。今後はこちらの訴求にも力を入れていく」とも意気込む。

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