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大和研究所、再生材使用率95%のリサイクル材料や低温はんだを「ThinkPad」へサステナブル設計(2/4 ページ)

レノボ・ジャパンは、オンライン記者説明会「レノボ大和研究所 サステナブルな製品開発について」を開催し、「ThinkPad」に代表されるレノボ製PCにおけるサステナブルな製品開発の取り組みと、パートナー企業との協業により実現した環境負荷を低減させる要素技術について説明した。

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再生材使用率95%以上を実現、ThinkPadにおけるリサイクル材料適用

 製品開発におけるリサイクル材料の使用に関しては、ソニーセミコンダクタソリューションズとの戦略的パートナーシップに基づき、ソニーセミコンダクタソリューションズの環境配慮型難燃再生プラスチック「SORPLAS」を適用した、ThinkPad製品の開発を進めている。

 SORPLASとは、“Sustainable Oriented Recycled Plastic”の略称で、廃棄されたDVDなどの光ディスクや水ボトルなどから再生したポリカーボネイト樹脂に、独自の難燃剤(PSS-K)を微量添加することで作られる難燃再生プラスチックだ。PSS-Kは1%未満の添加でポリカーボネート樹脂を難燃化できるため、再生材の使用率を最大で99%まで高めることができるのが特長である。

SORPLAS(1)SORPLAS(2) 難燃再生プラスチック「SORPLAS」について[クリックで拡大] 出所:ソニーセミコンダクタソリューションズ/レノボ・ジャパン

 SORPLASは、難燃剤の添加量が少なくて済むことからポリカーボネイト樹脂の本来の物性を保つことが可能で、回収/破砕、混合、溶融/混練し、リペレット化を繰り返し行っても、初期物性を保持し続けることができるという。また、SORPLASの調色に関しては「基本的にあらゆる調色は可能である。ただし、原材料に青色の水ボトルを用いている関係で、要求の色にきっちりと合わせることが困難なケースもあり得る」と、ソニーセミコンダクタソリューションズ IoTソリューション事業部 事業部長の中村俊之氏は説明する。

SORPLASの製造プロセスについて
SORPLASの製造プロセスについて[クリックで拡大] 出所:ソニーセミコンダクタソリューションズ/レノボ・ジャパン

 両社の協業は、リサイクル材料をThinkPad製品のACアダプター(45W/65W)に用いることを目的に2017年からスタート。試行錯誤しながら2019年にはUL認証を取得し、途中、金型のチューニングや射出位置/成形条件の最適化、設計変更などの改良を加えながら、2020年12月〜2021年1月に、再生材を95%以上使用したリサイクル材料(SORPLAS)でACアダプターの量産出荷を果たした。

ソニーセミコンダクタソリューションズとの協業の歩み
ソニーセミコンダクタソリューションズとの協業の歩み[クリックで拡大] 出所:レノボ・ジャパン

 また、同社はThinkPad製品の中でのSORPLASの適用範囲をさらに拡大し、スピーカーボックス、アンテナ&ケーブルホルダー、バッテリーパックにまで広げている。

 「一般的な民生機器とは異なる高い品質基準や堅牢性を誇るThinkPad製品に対して、われわれのSORPLASを適用するには、既存のラインアップでは対応が難しかった。そのため、製品それぞれの要求仕様に合わせた新しいSORPLASを開発することで製品化を実現した。例えば、ACアダプターであれば高耐久性はもちろんのこと、高い衝撃強度を実現するSORPLASを開発。スピーカーボックスやバッテリーパックに関しては、薄肉構造であることから難しさもあったが、高耐久で高難燃性を保持しつつ、成形しやすいSORPLASを新たに開発し、厳しい要求に応えることができた」(中村氏)

ThinkPad製品に対してSORPLASの適用範囲を拡大
ThinkPad製品に対してSORPLASの適用範囲を拡大[クリックで拡大] 出所:レノボ・ジャパン

 サステナブルな製品開発を推進する立場にある、レノボ・ジャパン Distinguished Engineer&Executive Director,Commercial Subsystem Development,CPSDの小菅正氏は「われわれの調査によると、2021年の時点で競合他社は50%程度の再生材を使用したリサイクル材料で製品を開発し、2022年中の量産に向けて評価を進めている状況にあるが、レノボは既に再生材使用率95%以上のリサイクル材料で製品開発を進めている。競合他社と比較して、3年以上のアドバンテージがあると認識している」とリサイクル材料の使用において、レノボが業界をリードする立場にあると強調する。

 さらに現在は、SORPLASをPCの筐体やキーボードカバーへ適用すべく開発、評価、検証が進められているという。「現時点における意気込みとしては、今後1年、場合によっては2年以内に適用に向けためどが付けられたらと思っている(※注1)。ただ、実際には高再生材率を維持したまま、筐体やキーボードカバーに求められる剛性のスペックを達成しなければならないため、非常にハードルの高い挑戦だと考えている」(中村氏)と語る。

※注1:素材開発としてのめどのことであり、SORPLASを筐体やキーボードカバーに採用した新製品(PC)が今後1年、2年以内に市場投入されるという意味ではない。

将来に向けて、筐体やキーボードカバーにもSORPLASを適用すべく研究開発を進めている
将来に向けて、筐体やキーボードカバーにもSORPLASを適用すべく研究開発を進めている[クリックで拡大] 出所:ソニーセミコンダクタソリューションズ/レノボ・ジャパン

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