400海里、40時間の実証航海で見えてきた無人運航の実力:船も「CASE」(1/4 ページ)
日本財団が進めている無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」と、その支援を受けて無人運航船システムの開発を進めているDFFAS Projectコンソーシアムは、2022年2月26日〜3月1日にかけて実施した無人運航船実証実験に関する記者発表会を開催し、実証実験の概要と成果について明らかにした。
日本財団が進めている無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」と、その支援を受けて無人運航船システムの開発を進めているDFFAS Projectコンソーシアムは、2022年2月26日〜3月1日にかけて実施した無人運航船実証実験に関する記者発表会を開催し、実証実験の概要と成果について明らかにした。
日本財団専務理事の海野光行氏は、無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」とDFFAS(Designing the Future of Full Autonomous Ships)コンソーシアムがコンテナ船「すざく」によって実施した今回の実証実験の概要を紹介した。
プロジェクトの背景には内航海運における船員の高齢化が大きな課題となっていることを海野氏は挙げている。50歳以上の船員が50%を超えており、400ある有人離島航路の維持も困難な状況に陥っている。加えて、海難事故の8割がヒューマンエラーを原因としている。このような問題の解決策として1人当たりの労務負担の軽減が必要とされており、船舶運航の無人化、自動化は大きな解決策の1つとして期待されている。
一方で、船舶運航の無人化/自動化の開発において、企業それぞれが個別に開発を進めると完成まで時間がかかるため、開発した技術の普及に大きく影響する国際基準化、標準化の過程において主導権を得ることができず、国際競争に後れを取る恐れがあるとしている。その解決のため、「現状を打破するためにはオールジャパンでプロジェクトを実施すべき」(海野氏)との考えからMEGURI2040を立ち上げた。海洋関連業界のみならず、AI(人工知能)や通信、商社までも含めた他分野の事業体による開発体制とし、日本財団がそれぞれをMEGURI2040の中でサポートしていくとしている。
目指すゴールは技術の確立と国際ルール策定
海野氏は、MEGURI2040プロジェクトの目指すゴールとして、無人運航の実証を経て技術の確立を実現するとともに、IMO(国際海事機関)やISO(国際標準化機構)における無人運航実現に必要なルール策定への貢献を掲げている。「無人運航実証の実績、データの取りまとめといった成果で日本主導による無人運航のルール策定に貢献することが重要」(海野氏)という。
そして、無人運航に対応できる新しい世代の船員育成と運航のためのインフラ整備も重要だと訴える。既存の船員スキルに加えて、無人運航を支える遠隔操船など新たな技術が必要で、船員育成のカリキュラムも新たに求められるスキルの育成に対応しなければならないとしている。同時に港湾などの海運を支えるインフラも必要不可欠で、MEGURI2040ではこの整備でも貢献していきたい考えだ。
今回実施した「すざく」による実証実験は、2021年度を達成時期として進められていた。2021年度に予定していた実証実験は、今回の「すざく」による航海を含めて6航海。長距離長時間(12時間以上)、輻輳(ふくそう)海域、大型船(全長200m以上)、高速航行(時速50km)、飛翔型ドローンによる係船支援、コンテナ船、小型観光旅客船、水陸両用船といずれも世界初の実証実験を実施している(水陸両用船のみ2022年3月14日実施予定)。
海野氏は次の段階の達成目標として、2025年までの無人運航の本格的な実用化を掲げている。
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