2021年11月の新車のグローバル生産を振り返り、各社が挽回生産に注力:自動車メーカー生産動向(2/2 ページ)
日系乗用車メーカーが発表した2021年11月のグローバル生産台数は、東南アジアのロックダウンによる世界的なサプライチェーンの混乱が落ち着きを取り戻しつつある結果となった。
日産自動車
日産自動車の11月のグローバル生産は、前年同月比20.2%減の32万2218台と5カ月連続で前年実績を下回った。これは8社の中で最も大きなマイナスだった。このうち海外生産は同19.8%減の28万2397台と5カ月連続のマイナスで、減少幅も10月から2.1ポイント悪化した。国別では最大市場の中国が同17.2%減と8カ月連続のマイナスとなった他、メキシコが同27.2%減、英国が同47.6%減と大きく下落した。一方で、米国は「フロンティア」の好調で同2.0%増とプラスを確保。スペインも台数規模は小さいながら同27.3%増と増加した。
国内生産は前年同月比23.6%減の3万9821台と3カ月連続のマイナスだったものの、減少幅は10月より21.3ポイント改善した。それでも8社最大の落ち込みだった。国内市場向け「ノート」が受注好調で大幅に増加した影響が表れた。ただ、輸出が前年比半減と国内生産の足を引っ張る格好となった。
スズキ
スズキの11月のグローバル生産は、前年同月比3.3%減の25万8862台と4カ月連続で減少した。減少幅自体は10月から19.7ポイントの改善を見せた。海外生産では、グローバル生産の半数以上を担うインドは、東南アジアからの部品供給が不足し同3.1%減と4カ月連続で減少。インド以外の海外生産も同1.9%減と減少した結果、海外トータルでは同2.9%減の17万4480台と3カ月連続のマイナスだった。国内生産も、同4.2%減の8万4382台と6カ月連続で減少した。海外同様に東南アジアからの部品供給難の影響が続いている。
ダイハツ
11月のグローバル生産台数で最も高い伸び率を見せたのがダイハツ工業だ。前年同月比20.4%増の14万5438台と5カ月ぶりにプラスへ転じた。国内生産は同13.5%増の8万350台と5カ月ぶりのプラス。東南アジアからの部品供給が改善していることに加えて、前年に樹脂バックドアなどの調達先であるエイエフティーの塗装ラインで火災が発生し、部品供給が滞ったことで本社工場と滋賀第2工場で約2週間生産を停止した反動増が表れた。中でも新たにシリーズハイブリッドモデルを追加した「ロッキー」およびトヨタ向けにOEM供給する「ライズ」や販売好調な「トール/ルーミー(トヨタ)」により、登録車生産が同76.3%増と大幅に伸長し、11月として過去最高を更新した。一方、軽自動車は同8.5%減と伸び悩んだ。
国内以上に伸長したのが海外生産で、前年同期比30.2%増の6万5088台と4カ月連続のプラス。8社で最大の増加幅となった。これはインドネシアが前年のロックダウンで低迷していたことへの反動増が続いており、同64.4%増と高水準の伸びを見せたのが要因となった。
マツダ
厳しい状況が続いていたマツダも回復基調が鮮明となってきた。11月のグローバル生産台数は、前年同月比8.2%減の11万744台と5カ月連続で減少したものの、減少幅は10月に比べて40.5ポイント改善した。半導体の供給不足が緩和したことで、主力の国内生産は同0.7%減の7万7620台と5カ月連続のマイナスだったが、10月の前年比半減から大きく改善した。車種別では「CX-5」や「CX-30」が依然として前年割れ。「マツダ3」は同38.5%増と大幅な回復を見せた。
国内生産が回復を見せた一方で、海外生産は前年同月比21.9%減の3万3124台にとどまり、7カ月連続で減少した。中国は同1.2%増と9カ月ぶりにプラスへ転じた。ただ、タイは半導体不足や東南アジアでの新型コロナウイルス感染拡大により乗用車ラインを5日間稼働停止した他、ピックアップトラック「BT-50」の生産終了の影響などで同48.7%減と半減。メキシコも半導体不足や東南アジアからの部品供給不足で8日間の操業停止を実施し、同34.7%減と大幅に減少した。
三菱自動車
三菱自動車の11月のグローバル生産台数は、前年同月比13.6%増の9万5606台と8カ月連続で増加した。回復をけん引したのは海外生産で、同23.3%増の5万8746台と9カ月連続のプラス。ダイハツ同様にインドネシアが同32.7%増と好調を維持していることに加えて、主力のタイもピックアップトラック「トライトン」の伸長により同35.0%増と高い伸びを見せた。一方、中国は同20.6%減と低迷した。国内生産は同0.9%増の3万6860台と8カ月連続でプラスを維持した。北米向けの新型「アウトランダー」が好調で、北米向け輸出は同37.9%増と高い伸びを示した。
スバル
スバルも回復の兆しを見せている。11月のグローバル生産台数は前年同月比4.3%減の7万7692台と5カ月連続で前年実績を下回ったが、減少幅は10月から28.9ポイント改善した。半導体不足に加えて東南アジアからの部品供給の影響があるものの、特に海外生産は前年にコンテナ港の混雑により部品供給の滞りが発生したこともあり、同13.8%増の2万5791台と6カ月ぶりにプラスへ転じた。一方、国内生産は同11.3%減の5万1901台と5カ月連続のマイナス。これに伴い輸出も同14.5%減と伸び悩んだ。
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