IoTを軸に製造業DXを進める4つのステージ、そしてはじめの一歩:製造業DX基礎解説(4/4 ページ)
製造業でも求められるようになっているDX(デジタルトランスフォーメーション)。本稿では、IoTを軸とした製造業におけるDXの進め方を4つのステージに分けて解説する。また、製造業DXのはじめの一歩となるIoTで効果を得るための2つのポイントも紹介する。
DXのはじめの一歩、何から踏み出すべきか
ここまでご説明したように、IoTはDXのはじめの一歩となる技術です。新たな価値創造をゴールとする場合も、まずはモノのデータ化、データの共有や見える化から始めてください。筆者は、さまざまな場所でIoTやDXの進め方についてご紹介していますが、その際「早く結果を出すには、何から踏み出せばいいか?」というご質問をいただくことが多くあります。私の経験を基に、IoTで効果を得るための2つのポイントをご紹介します。
IoTで効果を得やすい現場を見つけるための公式、それが「利用頻度×規模=結果」です。
例えば、以下の2つの現場のうち、どちらの方がIoT化による効果が大きいでしょうか。
1つ目は、拠点数は1つしかないが、1日に3回の稼働記録を取る機器のIoT化。
2つ目は、設備は全国100拠点あるが、1つ1つは年に1回だけ点検すればよい機器のIoT化。
すぐに取り組むべき現場は、1つ目です。毎日起きていることをIoT化すれば、その効果は明日にでも分かり、また、分析のためのデータも日々蓄積できます。一方、1年に1回しか起きないことをIoT化した場合、効果や分析できるだけのデータを蓄積できるのは、何年後になるでしょうか。
このように、まずは結果が出やすい現場を選んで、アイデアを実際に実装することで、早く結果が得られます。そして、その成果を基に周囲を説得し、さらなる現場のデジタル化を推進することができますし、もし成果が伴わない場合は、すぐに仮説を再検討しやり直すことができます。
DXやIoT化を検討している現場があれば、まずはこの公式で優先度を付けてみてください。
次に、「作らずに、創る」というキーワードです。これは、私がDXを紹介する際によく使うワードで、一から自作せずに、成果を創るという意味を込めています。
IoT活用はDXの入り口ですので、センサーやデバイスの選定や製作、データの蓄積・活用の仕組みの構築など、データの取得・蓄積という前段階に時間をかけてしまうと、実際に成果が出るまで時間がかかってしまいます。せっかく現場と意気投合していても、熱量が下がってしまうことも考えられます。
全てを自作したり、現場の要求を全て満たすシステムを考えたりするよりも、まずは小さく、アイデアの正当性を確かめるために必要な最低限のシステムに求められる仕組みを計画してみてください。
実現方法としては、「Raspberry Pi(ラズベリーパイ、通称ラズパイ)」や「Arduino(アルデュイーノ)」のような、公開ドキュメントも多い汎用デバイスを利用して組み上げてみたり、既にあるソリューションパッケージを取り入れたり、時には専門知識がない分野はパートナーに相談するのも一手でしょう。自作する場合でも、最近は通信とセンサーがパッケージになったデバイス、クラウド連携がプリセットされたセンサー、プログラマブルなAIカメラなど、開発にかかる手間を削減するためのプロダクトが増えつつあります。ソラコムでも、IoTのECサイトとなる「SORACOM IoTストア」でこのようなデバイスを提供していますし、「IoT DIYレシピ」という形で用途別の開発手順書も無料で公開しています。こういったものも参考にしてみてください。
以上、DXの4つのステージと必要となるテクノロジー、DX/IoT活用に踏み出す際のポイントについてご紹介しました。自社の現状のステージを振り返り、DXの実践にお役立ていただけると幸いです。
プロフィール
松下 享平(まつした こうへい) 株式会社ソラコム テクノロジー・エバンジェリスト
株式会社ソラコムの事業開発マネージャーとして主にデバイスの企画を担当しながら、エバンジェリストとして、SORACOMサービスを企業・開発者により理解、活用していただくための講演活動を担当。前職はぷらっとホーム株式会社にてIoTソリューションを担当。サブギガ/BLEを用いたIoTシステム構築等、先駆的なIoT導入事例に関わる。
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