インテルから独立したウインドリバー、今度はアプティブが4900億円で買収:組み込み開発ニュース
米国の大手ティア1サプライヤーであるアプティブ(Aptiv)は、リアルタイムOS「VxWorks」や組み込みLinux「Wind River Linux」などのベンダーであるウインドリバー(Wind River Systems)を買収すると発表した。買収金額は43億米ドル(約4900億円)。
米国の大手ティア1サプライヤーであるアプティブ(Aptiv)は2022年1月11日(現地時間)、リアルタイムOS「VxWorks」や組み込みLinux「Wind River Linux」などのベンダーであるウインドリバー(Wind River Systems)を買収すると発表した。買収金額は43億米ドル(約4900億円)で、ウインドリバーの株主である投資ファンドのTPGに現金で支払う。買収は各国規制当局の承認を得た上で2022年半ばに完了する予定だ。
ウインドリバーは、VxWorksやWind River Linuxなどをはじめとする組み込み機器向けソフトウェアを主力事業とするベンダーとして知られている。同社の製品は、航空宇宙・防衛、産業機器と医療、通信、自動車などの分野において、世界1700社以上の顧客の20億台を超えるエッジデバイスに採用されているという。現在は、デバイスからクラウドまで、ミッションクリティカルなインテリジェントシステムの開発、デプロイ、運用、サービスを提供する業界初のクラウドネイティブプラットフォームとなる「Wind River Studio」なども展開している。
なお、ウインドリバーの2021年の売上高は約4億米ドル(約456億円)で、売上高総利益率は80%以上、EBITDAマージンは20%以上となっている。産業分野ごとの売上高比率は、航空宇宙・防衛が約45%で一番大きく、産業機器と医療が約30%、通信が約15%で、アプティブとの関わりが大きい自動車は約10%にとどまる。
今回の買収によりアプティブは、ウインドリバーの製品と技術力をベースに、ソフトウェアがより重要な役割を果たす自動車をはじめとするモビリティ分野のビジネスチャンスに対応し、複数の高付加価値産業に進出することが可能になる。ウインドリバーのWind River Studioと、それを補完するアプティブの車載システムプラットフォーム「SVA」および自動車に関する専門知識を組み合わせることで、自動車用ソフトウェアソリューションにおけるアプティブの地位を向上し、顧客である自動車メーカーに対してフルビークルソフトウェアアーキテクチャへのより迅速かつ経済的な道を提供するとしている。
なお、ウインドリバーは、アプティブのAdvanced Safety&User Experience(AS&UX)セグメント配下で独立した事業として運営を継続する予定だ。ウインドリバーの売上高に当たるアプティブのAS&UXセグメントのソフトウェア売上高は、2021年の4億米ドルから2026年には10億米ドルまで伸ばせると見込む。その年平均成長率は20%に達する。
1981年創業のウインドリバーは2009年、インテルが約8億8400万米ドルで買収し傘下に収めた。それから約9年間はインテル傘下で事業を展開していたが、2018年4月には投資ファンドのTPGが買収し、インテルから独立していた。
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