電動化でさらにレースを面白く、時速380kmの戦い「インディカー・シリーズ」:モータースポーツ超入門(11)(2/3 ページ)
時速380kmにも達する超高速スピードで競う北米最高峰のモータースポーツが「インディカー・シリーズ」だ。
オーバルトラックで抜きつ抜かれつ
レーススピードも異次元だ。最高速度は時速380kmに達し、平均速度は予選で時速360km、決勝でも時速350kmを超える。ドライバーはこの超高速の中で、ドラフティング(一般的にスリップストリームと呼ばれる。空気を切り裂いて走る前走車の後ろに付くと空気抵抗が小さくなり、吸い寄せられるようにスピードが早くなる)を駆使することで、スタートからゴールまで、オーバルトラックのあらゆる場所で、テール・トゥー・ノーズ、サイド・バイ・サイドのオーバーテイクショーを繰り広げる。これこそがインディ500、アメリカンモータースポーツの醍醐味(だいごみ)なのだ。
このハイスピードバトルはIMSのコースレイアウトにも関係している。1周2.5マイル(約4000m)のIMSは約1kmのロングストレート2本と約200mのショートストレート2本、この4本のストレートをつなぐ4つのコーナー(ターン)で構成されている。4本のストレートは水平(フラット)だが、ターンには約9度の傾斜(バンク)が付けられている。バンクはマシンが遠心力でコースアウトしないようにするための構造だ。このバンクがあることで、マシンは減速を最小限にとどめることができ、ターンを速く走行することが可能になる。
トラック形状やバンク角などは異なるものの、インディカー・シリーズが行われる多くのオーバルトラックが同様の構造となっている。オーバルトラックは1周1.5マイルを基準にして、1マイル前後のトラックをショートオーバル、1.5マイル以上をスーパースピードウェイと呼ぶ。オーバルトラックでの旋回能力を上げるため、タイヤ径が異なる「スタッガー」と呼ぶマシンセッティングもインディカーならでは。右リアタイヤの直径を左リアタイヤよりも大きくすることで、自然に左に曲がるようになっている。
日本でも開催
インディ500を中心に展開されているインディカー・シリーズ。100年の歴史と伝統をもつインディ500とは裏腹に、そのシリーズ運営を巡っては混乱の歴史も併せ持つ。
もともとインディカーは、1979年からCART(Championship Auto World Racing Team)という団体がシリーズを運営していた。インディ500も同シリーズの1戦として組み込まれ、1990年代にはF1と並ぶ人気を博していた。ただ一方で、インディ500を主催するIMSのオーナーがCARTの状況に不満を抱き、CARTからの分離独立を宣言。新たに1996年からインディ500を中心とした新シリーズ「IRL(Indy Racing League)」を設立したため、2つのシリーズに分裂することになった。
これまでインディの名称を使っていたCARTだが、インディの商標はIMSが持つ。このためマシン名を「チャンプカー(Champ Car)」に変更するとともに、インディ500の開催もIRLへと移ることになった。CARTは2003年に経営破綻。CCWA(Champ Car World Series)が引き継いだが、2008年にIRLに統合されシリーズが終了した。
一方、IRLは2010年にシリーズ名をIRLから現在のインディカー・シリーズへと変更。オープンホイール形式による北米最高峰のレースカテゴリーが誕生することになった。現在はオーバルトラックのみならず、ロードコースや市街地コースでもレースを開催している。
インディカーは米国国内を転戦するレースだが、1998〜2011年には日本でも開催されている。1998〜2002年はCARTシリーズ、2003〜2011年まではIRLシリーズの1戦として、オーバルトラックを持つツインリンクもてぎ(栃木県茂木町)で開催。日本での最後の開催となった2011年は東日本大震災の影響でオーバルトラックが使用できなくなったため、ロードコースでレースが行われている。
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