「設備管理」とは何か、自動化が進む工場での重要性を改めて考える:生産性向上のもう一つのキモは、設備管理の徹底にあり(1)(2/4 ページ)
工場の自動化が進む中でより重要性を増している「設備管理」について解説する本連載。第1回は、設備管理の全体像を紹介するとともに、経営視点との関係性についても解説する。
2.設備管理とは
2.1 事業環境と設備管理
昨今の経営の特色として見られるのが、設備の導入による加工技術の高度化であり、省力化です。激しい企業競争や国の「ものづくり補助金」の活用などによる設備投資の活発化など、設備の合理化を誘発し、いっそう自動化に拍車を掛けているといえます。その結果、生産の主体は人手から機械設備に移り、製品の生産量、品質、コストなどに影響する大きな要因として機械設備のウェイトは、ますます増大してきています。
また、自動化の促進や高度化のためには巨額な設備投資を要することになり、この投資を回収するため設備をフルに活用しなければ企業の収益を上げるどころか、企業の命取りにさえなりかねない状況も一面としてあります。同時に、設備の高度化とともに、その性能維持のために、高度な技術と多くの保全費用を要するという事態にも直面しています。
このように経営の側面においては、設備の管理が極めて重要な課題になっています。仮に、設備管理の重要性がないとすれば、それは設備への依存度が低く、モノづくりの変革に乗り遅れた企業という見方をすることもできます。従って、生産現場の第一線を預かる管理監督者は、実際に機械設備を毎日取り扱う作業を直接に統括している立場でもあり、これらの考え方を十分に理解して設備管理を実行していかなければなりません。
2.2 設備管理
設備管理には、広義と狭義の2つの解釈があります。「広義の設備管理」は、企業の機械設備の計画、設備の設計・製作、その保全、機械設備の更新など、設備の一生涯の管理を意味しています。また、「狭義の設備管理」は、機械設備の保守・点検と、それに使用される工具や治具および測定器などの改善や標準化を意味しています。
昨今、化学工業や製鉄業などの装置産業だけではなく、電機や機械工業の組立型産業においても新規の機械設備の導入による自動化が進み、設備が大型化・高度化されてきています。それだけに設備の在り方によって製品の品質や原価、納期(数量)などが大きく左右されることになります。設備が故障したり事故を発生させたりすると、生産性が低下するだけではなく不良品が発生し、企業の収益に大きな損失を与え兼ねないため、高度な保全管理技術の構築が求められるということになります。この高度な保全管理技術を構築する上で重要なことは次の5点になります。
- 作業中における設備の故障を最小限にし、生産量の安定を図ること
- 各設備の能力を常に把握し、機能を維持させること
- 設備の安全性を考慮し、労働災害を未然に防止すること
- 老朽機械設備を新しく更新する場合は、経済性と対比して検討すること
- 必要なときに、確実に各機械設備が使用できるような状態に保つこと
設備管理の体系図を図2に示しておきました。図2の各項目についての説明は次回以降に行いますが、簡単にいえば、「事後保全」は機械設備が故障してから修理をした方がメリットがある機械設備に適用します。「予防保全」は、予防保全を行った方が、より利益の増大が見込める場合に適用します。「改良保全」は、機械設備自体の体質改善を行う場合に適用します。「保全予防」は、設備保全や改善の結果を次の設備計画に反映させて、故障や運転ミスのない機械設備にするという新しい機械設備のPM設計を指しています。
また、図2の中で、一般に設備保全と呼ばれているものは、生産保全(Productive Maintenance)のことで、生産保全の意味は、「設備の一生涯にわたって、設備自体のコストや設備の運転維持に要する一切の費用と、設備の劣化損失との合計を引き下げることによって、企業の生産性を高める保全方式」のことをいいます。
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