不足データはAIが自動推定、軽量で使いやすいデジタルツインソリューション:製造ITニュース
ゼネテックは2021年10月25日、高精度かつ高速なデジタルツインモデリングを実現するソリューション「iPerfecta(アイパーフェクタ)」の販売開始を発表した。同社が国内で展開している「FlexSim」に、BIRD INITIATIVEのAIソリューション「assimee」を組み合わせて共同開発した。
ゼネテックは2021年10月25日、高精度かつ高速なデジタルツインモデリングを実現するソリューション「iPerfecta(アイパーフェクタ)」の販売開始を発表した。同社が国内で展開している「FlexSim」に、BIRD INITIATIVEのAI(人工知能)ソリューション「assimee」を組み合わせて共同開発した。
手軽で軽量なデジタルツインソフトウェア
iPerfectaはデジタルツイン向けの離散事象解析3DシミュレーションソフトウェアであるFlexSimをベースに、新たなAIオプション機能としてassimeeを連携させたソリューションである。物流や製造、医療などの産業分野での活用を見込む。
ベースとなるFlexSimは米国のFlexSim Software Productsが開発しており、世界中で5万7000件のライセンスを販売している。国内ではゼネテックが総代理店として製品展開を行う。またassimeeの開発元であるBIRD INITIATIVEは、NECと産業技術総合研究所 人工知能連携研究室が2020年9月に設立した企業である。
FlexSimには工場の生産ラインや物量倉庫などでの人や物の流れに関するシミュレーションを簡単に行える上、動作が軽量であるといった特徴を持つ。高い計算処理能力を持つワークステーションなどは必要なく、一般的なPC上でも使用可能。現場を3Dモデルで再現するだけでなく、設備機器ごとの稼働率や、従業員の作業負荷などの情報をグラフ化して取得することもできる。
また、FlexSimは設備機器のモデルがライブラリとして用意されており、これらを使用して配置できる。モデル自体を線で結び合わせることで、実際の人や物の流れを再現可能だ。従来はCADソフトウェアを使って、仮想空間内で設備機器の配置を再現する必要があったが、こうした手間を省く。フローチャートを使うことで、より複雑な人流や物流の動きも再現できる。
例えば、検討中の新しい設備レイアウトについて、現在のレイアウトを変更した場合の生産効率性などを鑑みて比較検討できるようになる。この他、生産管理システムやWMS(倉庫管理システム)、PLCなどと連携することで、在庫状況や生産状況を日々管理しつつ、最適な作業人員数や配置を決められるようになる。また、iPerfectaでは目標出荷量などを入力すると、その目標値を達成するために必要な設備機器やAGV(無人搬送車)の稼働量を自動予測する機能もある。
不足データをAIが自動推定
ただし、予測に必要なデータが常に手元にそろっているとは限らない。そこでiPerfectaではassimeeを活用することで、不足分のデータを補ってシミュレーションする機能を実現した。
例えば、機械の故障間隔や従業員の平均歩行速度などのデータがない場合、AIが既知のデータから自動的に値を推定して、不明なパラメータを穴埋めする。この他、機器の故障頻度や故障時間が分からない場合であれば、出荷量などから値を推定する。AIがどのように推測を行ったかについても、後から確認できる。
ゼネテックは今後5年間で、iPerfectaを300ライセンス販売することを目標とする。米国など海外市場への展開も視野に入れる。
提供価格はライセンス価格とシステムインテグレーション費用を併せて2000万〜5000万円になる見通しだ。
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