Re:ゼロから始める工場のサイバー衛生:事例で学ぶ製造業DXセキュリティ対策入門(3)(1/5 ページ)
社内DXセキュリティプロジェクトチームのリーダーに任命された、ABC化学薬品新卒6年目の青井葵。元工場長の変わり者、古井課長の手助けも得て、製造業がDXプロジェクトと併せて進めるべき「DXセキュリティ対策」を推進していく本連載。今回は、セキュリティが自分事ではない工場現場にセキュリティ意識を持ってもらうための方法を考える。
国内製造業で進む、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)、クラウドなどを活用した「DXプロジェクト」。分かりやすい価値を生み出すDXに対して、取り組みが遅れがちなのがセキュリティ対策です。
そこで本連載では、国内中堅化学薬品メーカーのABC化学薬品に勤める新卒6年目の青井葵を主人公に、製造業がDXプロジェクトと併せて進めるべき「DXセキュリティ対策」について解説します。
⇒連載「事例で学ぶ製造業DXセキュリティ対策入門」バックナンバー
本連載の登場人物
青井葵(あおいあおい):ABC化学薬品のセキュリティ問合せ担当から会社全体のDXセキュリティのプロジェクトに大抜てきされた。新卒6年目。人当たりがよく、元気印の愛されキャラ。趣味は旅行、ラノベ・アニメ鑑賞。
古井静三(ふるいせいぞう):ABC化学薬品のセキュリティ担当課長、元工場長で現社長の黒川とは盟友関係。工場長時代に大病を患い2年ほど職場を離れたあと、趣味のPCの知識を生かして、数年前にセキュリティ部門の担当課長として職場復帰。いつもひょうひょうとしていてつかみづらい変わり者。趣味は無線、PC自作、釣り。
※)編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物、団体などとは一切関係ありません。
何から手をつけていいか分からない!?
連載第2回で、工場側メンバーとの打ち合わせがうまくいかないという悩みを何とか解決した青井葵。打ち合わせの内容を整理すると、そこからまたもや新たな問題が持ち上がってきた。うーんこりゃ困ったぞ……。
うーん。むー。いやはや。
おやおや、ずいぶんと渋い顔をしているね。また、工場の人たちとの打ち合わせがうまくいかなかったの?
自席で先日の工場との打ち合わせ結果の整理に悩んでいるところに、古井課長がコーヒーを片手に話しかけてきた。休憩の帰りに様子を見に来たのだろう。私が困っているのが楽しそうにみえるのは気のせいだろうか。
いや、課長のおかげで、あの後仕切り直しをしてからは、工場の人たちもとても協力的になってくれまして、ヒアリング自体はうまくいってるんです。現場にも連れていってもらいましたし。
おー、それは良かったじゃないか。ちゃんと工場の文化を学んでいった成果かな。
まあ、それもあるんですが、仕切り直しの打ち合わせ冒頭で「前回の反省を生かして、ドSの古井課長に5Sを教えてもらいました」と言ったら大ウケでして。そのあと和やかに進めることができました。
……。なんか複雑な気持ちだな。今の生技の主任は昔の部下だからね。彼にはそんなに厳しくした覚えはないんだが。
それは良かったのですが、工場のセキュリティ上の課題をヒアリングしてたら、いろいろありすぎて、何から手をつけていいのか分からないんです。
なるほど、でも最初に比べれば随分と進歩じゃないか。
課長は、飲みかけのコーヒーの紙コップを私の机に置き、空いている椅子を持って来て腰を下ろした。相談に乗ってくれそうな雰囲気だ。最近、お互い忙しいのと、リモートワークで顔を合わせる機会が減っていたのでありがたい。
ちょうど今、これまでの打ち合わせの結果をまとめているところです。
課長は腕組みしながら、私のパソコンをのぞき込んで、ふむふむうなずいている。
せっかくだし、少しヒアリングの状況を話してみてよ。それで気付くこともあるかもしれないよ。
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