AGV+協働ロボットでツール搬送を自動化、デジタル人作業支援も行うDMG森精機:スマート工場最前線(1/2 ページ)
DMG森精機は2021年9月30日、伊賀事業所 メディアデーを開催し、同社伊賀事業所での先進の生産技術活用について説明した。本稿では、移動型ロボットを活用したツール管理の取り組みと、システムによる人の作業支援についての取り組みを紹介する。
DMG森精機は2021年9月30日、伊賀事業所 メディアデーを開催し、同社伊賀事業所での先進の生産技術活用について説明した。本稿では、移動型ロボットを活用したツール管理の取り組みと、デジタルによる人の作業支援についての取り組みを紹介する。
自社の工作機械で工作機械を作る工場
三重県伊賀市にあるDMG森精機の伊賀事業所は58万m2の敷地面積を誇る同社の最大の拠点である。生産面でも改善活動や先進技術の採用なども含めさまざまな取り組みを進めるマザー工場の1つという位置付けである。伊賀事業所内には、工作機械の主要部品の加工を行う精密加工工場、組み立て工場が複数組み合わさって構成されている。
伊賀事業所の特徴が、工作機械の生産を行うのに自社の工作機械や製造関連技術をフル活用しているという点だ。特に主軸など工作機械で使用する精密部品の加工を行う精密加工工場では「5軸加工」「スマートファクトリー」「多品種少量生産」への対応をテーマに掲げ、同社製のさまざまな工作機械が導入されている。
ただ、さまざまな加工を行う際には、使用するツール(工具や治具)などの管理が煩雑になる。さらにこれらを管理場所から選び運ぶ作業は従来は人手で行っており、「人が行うのにやりがいもない上、負荷の高い作業となっていた」(DMG森精機)。そこで同社が新たに開発したAGV(無人搬送車)上に人協働ロボットを装着した移動型ロボットを、工作機械のツールの管理と搬送用に導入した。
移動型ロボットのAGV部分を自社開発
ポイントはロボットを載せるAGV部分を自社開発したという点だ。「既にAGVメーカーは数多く存在することから当初はAGVも他社から供給を受ける考えだった。しかし、用意されていた汎用製品は常に稼働し続けることを前提にするものだったり、重量などの問題だったり、工作機械工場向けで適用すると使い勝手が合わないものが多かった。そのため、自社で完全に内製するということになった」(DMG森精機)という。
独自開発したAGVは本体前面に設置されたレーザースキャナーと、アームに設置されたビジョンセンサーにより、±1mmの正確な位置決めが可能。SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)機能も搭載しており、実際に搬送するルートを試走させるだけで自動で地図作成なども可能としている。「レイアウト変更などがあっても週末の間に設定を変更するような使い方も容易に行える」(DMG森精機)。
搬送指示はAGVコントローラーから行い、ツール管理場所からツールプリセッタまでを運ぶ。ツールの設置または搬送目的場所にはバーコードが設置され、位置決めを正確に行えるようにするとともに、作業管理などに活用される。
実際に導入した伊賀事業所の第2精密加工工場では使用するツールが2800本以上あり、搬送の対象エリアは147×84mの範囲に及ぶ。これをカバーするため、従来は実際に加工する機械と管理場所の往復で専任の従業員が1人ついている状況だったが、それを完全自動化できたという。また「自動化により、取り付け間違いや記録漏れのような作業ミスの撲滅にもつながった。これらのほぼリアルタイムの記録が残していけることが、工場全体のツール本数の最適化などにもつなげられると考えている」(DMG森精機)。なお、DMG森精機はこの移動型ロボットシステムの外販も行っていく考えだという。
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